新人にもベテランにも役立つ!「作業習熟マニュアル」活用のすすめ

  1. マニュアル
  2. 72 view

新人教育の問題の一つに、曖昧な教育が挙げられます。
曖昧な教育とは、新人がマスターすべき仕事の取り組み方が、明文化されていない状態で、教育を施してしまうことを指します。

よく、新人同士の会話に聞き耳を立ててみると、こんな会話をしているのが聞こえてきます。

「取り組む工程が先輩によって違う。最終的には同じ内容の業務になるけど、どちらの先輩のやり方を真似したらいいんだろう」
「同じ業務を別の先輩に教わったけど、A先輩は◯と言っていて、B先輩は×と言っていた。どちらでおぼえたらいいのだろう」

一方、上司は新人に対し、「なぜ何度も教えたのに覚えないのか」「なぜ教えたことと違うことをやるんだろう」「自主的に学ぼうとしないから、教えるのに手間がかかってしょうがない」といった不満がどんどん生まれていきます。

新人と上司がお互いに不満を持ったまま業務に取り組んでいては、そもそも信頼関係が生まれません。そのような状態で、教育がうまくいくはずがありません。

このような悩みを抱えている方には、ぜひ「作業習熟マニュアル」を取り入れていただきたいです。
作業習熟マニュアルとは、基本となる仕事の取り組み方を、目に見えるようにまとめたマニュアルのこと。「目に見えるように」と表現したのは、作業習熟マニュアルは、文章だけではなく、動画や写真で作成するケースもあるからです。

仕事の取り組み方を明文化することは、新人だけではなく、全社員にメリットがあります
業務の基本が正しく、等しく、浸透させられるので、ミスやクレームの削減にも結びつきます

今回は、「作業習熟マニュアル」とはどういったものなのか、どう活用すればいいのか、新人教育の基本として活用するためのノウハウを紹介、解説していきます。

「作業習熟マニュアル」について

そもそもの前提として、マニュアルには、「作業習熟マニュアル」「成果獲得マニュアル」「問題解決マニュアル」「戦略立案マニュアル」の4つの分類があります。

「作業習熟マニュアル」は、新人が仕事の基本を身につけるための最初の一歩となるマニュアルです。まずは基礎を理解し、身につけるところからはじまります。
仕事の基本を身につけた後に求められるのは、業績成果を出すことでしょう。

そこで必要となるのが、「成果獲得マニュアル」。仕事の基本をマスターした社員が、会社の業績に貢献できるよう、売上の増加やコストの削減の方法をまとめたマニュアルを活用していきます。

個人としての成果を出せるようになれば、次に担う仕事はマネジメントとなるでしょう。マネジメント業務の手引きとなるのが、「問題解決マニュアル」になります。

「問題解決マニュアル」をマスターし、さらに上の役職である、事業部長や役員としての考え方を、学ぶ際に必要となるのが、「戦略立案マニュアル」です。
4つのマニュアルを整備すれば、業務の基本習熟、成果創出、チームマネジメント、全社戦略の立案という、自社独自の階層別ノウハウ集が完成します。

4つのマニュアル分類については、「業務に最適なマニュアルを作ろう!目的別にマニュアルを徹底分類!」もご参考ください。

作業習熟マニュアルは、4つのマニュアルのうちのファーストステップにあたります。まずは作業習熟マニュアルを作成・活用することで、全ての新人に対して、平等に教育を実施することができます
業務内容を可視化することで、先輩によって言っていることが違う、といった現象を阻止できるだけでなく、改めて手順やポイントを洗い出すことができ、より効率的な業務にアップデートできることもあるでしょう。

また、伝える内容が文章や画像、動画などでまとめられていることで、教育する側も新人が入社するたびに準備をする必要がなく、スムーズに教育を進められます

「作業習熟マニュアル」作成のコツ

「作業習熟マニュアル」は、業務の仕方そのものを見える化します。
「こんなに基本的な作業は、見よう見まねでできるだろう」と面倒くさがらないで、作業手順を一つひとつ丁寧に、かつ、誰が見てもわかりやすくなるよう、文章や動画にまとめていきましょう。

01. 対象となる手順を洗い出す

仕事の作業手順を、抜け漏れなく洗い出していきましょう。抜け漏れなく洗い出す、ということが大切です。
これはわざわざ書かなくてもわかるだろう、と思うことでもすべて洗い出してください。その手順こそが、作業全体のキモとなる場合があります。

作業手順を洗い出すコツは、実際にその作業をやりながら確認すること。頭で考えながら文字で書き出していくよりも、実際の作業を見ながら書き出す方が効率がいいです。
洗い出しを行うのは、2人1組がおすすめ。1人が実際に作業をし、それを1人が記録していくスタイルです。

作業手順を洗い出す作業は地味で面倒。ですが、ここが作業習熟マニュアルの根幹となります。
とりあえずつくってみようという勢いも大切ですね。

02. 手順の内容を可視化

つづいて、作業手順の内容を可視化していきます。
可視化というのは、誰が見ても同じ手順で、同じ作業を完遂できるように、細かく補足を付け加えていくこと

料理を例にしてみましょう。キャベツを切る、という作業をマニュアル化するとします。

  • キャベツ半玉をまな板の上にのっける
  • キャベツを切るために、菜切り包丁を選ぶ
  • キャベツの繊維と垂直になるように包丁を入れる。繊維を断ち切るように切っていく
  • 5cm角くらいの大きさにする
  • 傷んで黒ずんでいる部分は省いて、鍋にいれる

ここまで補足することが可視化する、ということになります。
例えば、5cm角くらいの大きさにする作業や、傷んで黒ずんでいる部分は省く、というのは、料理慣れしている人にとってはわざわざマニュアルにする必要がありません。
ところが、新人さんで今まで料理をやったことがない人が入ってきたらどうでしょう。感覚で切ればいいよ、と言われても、今まで料理をしたことがないので、感覚というものがわかりません。

作業工程を可視化することで、新人も一度の教育で工程を理解しやすく、その後、もし忘れてしまったとしても、作業習熟マニュアルを確認することで正しい作業を行うことができるようになります。

可視化のコツとしては、作業習熟者ひとりだけではなく、たくさんの人に可視化の作業をやってみてもらいましょう
先輩によって言うことが違う、というのはよくあること。しかし、フローが大きくずれることはなく、それぞれのステップでやり方がずれるという場合がほとんどなので、

03. 可視化した工程を図解する

可視化した工程をマニュアルに落とし込む時、図と文章を用いて図解していく必要があります。

コツとしてはわかりやすく、図と文章を組み立てること
文章だけを順番に書き連ねても、人によって読解力がまちまちなので、正しい意味で文章を読み解けない場合があります

工程をフローチャートなどに沿って、図解することで、業務の理解度の差が生まれないようにしましょう。
フローチャートにして図解にしていくと、わかりやすいです。

業務工程を文章化するときは事実にのっとって、書き出していきます。曖昧な言葉は使わず、固有名詞を正確に定義してみましょう。
例えば、洗剤を使う、という表現を、〇〇(ブランド名)の洗剤を使う、などと一工夫入れるだけで、図解を読んだ人全員が指定された洗剤を使うことができます。

01、02の作業工程を洗い出し可視化する、という作業は、量が膨大だとしても、作業そのものはそこまで難しくありません。
しかし、03の図解する工程は、実際に活用することを想定しながら文章と図を組み合わせて作成しなくてはならないため、かなり手間暇がかかります
図解にする作業で挫折してしまう人も多いのではないでしょうか。
洗い出しと可視化を完了させたことで達成感を得てしまい、そこでマニュアル作成が頓挫してしまうことも。

そこでおすすめなのが、動画マニュアルの活用です。
動画マニュアルであれば、実際の作業を撮影し、そこに補足の文章を書き足すだけで図解を作成できるため、作業の手間は一気に短縮できます
また、この後解説する、再現性の確認時に修正があった場合も動画マニュアルなら簡単に修正ができます。
図と文章のマニュアルの場合、イチからの作り直しになりますが、動画マニュアルであれば、文章の加筆修正などの簡単な修正で済ませることができるので、かなり作成担当者の負担は減るでしょう。

04. 再現性を確認する

完成したマニュアルの再現性を一つひとつ、確認していきましょう

作業工程を洗い出す、可視化する、図解にする、と細かくマニュアルを作成していても、どこかしらの作業工程で、「これってどういうこと?」と疑問に思うシーンが出てきます
その場合は、もう一度、01の手順に戻り、作業工程の洗い出しから確認しましょう。

多くのマニュアルが、この04の工程が抜けてしまっているのが、マニュアル作成の現状です。
マニュアルは作っても使えない、とよくいわれますが、理由の一つに、再現性がないことが挙げられます
再現性とは、実験や作業において、決められた条件や手順で行えば、同じ事象や結果が繰り返される、もしくはそのことが確認できることをいいます。
再現性のあるマニュアルを作ることで、使用するときに有効活用ができ、実際の業務においても最大限の効果を発揮します。

再現性のあるマニュアルを具体的にどのように作成すればいいのか、以下の記事で事例を交えてご紹介していますので、ぜひご覧ください。

「作業習熟マニュアル」活用のメリット

「作業習熟マニュアル」は、業務の標準化、新人の育成、多能工化の推進、業務手順の変更の基となり、業務品質の向上、人材の早期育成、生産性の向上、ミス・クレームの削減というメリットをもたらします。

マニュアルを作成する過程で、イレギュラーのケースに対応するための規定がないことに気づくこともあります。
例えば、製品の塗装が特殊な場合や、補助ナットを付属品にするなど、これまで、受注票を入力している営業事務と顧客とのあうんの関係でコード化せずに対応していたということが、マニュアルを作ることで明確になります。

業務の作業手順の可視化によって、全社統一の作業手順ができあがると、新人だけではなくベテラン社員も同じ手順で仕事を進めるようになるため、ミスやクレームが大幅に軽減されるだけでなく、作業スピードの差も埋まり生産性が高まります。

業務全般にわたる「作業習熟マニュアル」が完成したら、それぞれの業務の作業担当者を明記しましょう。
営業事務に携わっている社員が、全ての客先の受注票を取り扱えるとは限りません。複数の営業事務員がいた場合、誰が、どの客先の受注票を取り扱えるのかを一覧に示せば、特定の人に集中している事務作業が明らかになります。
他のメンバーがこの仕事をできるようになれば、この事務員が突然休んでも対応が可能となります。

作業習熟マニュアル4つのの活用方法

「作業習熟マニュアル」の活用方法は、「業務の標準化」、「新人の育成」、「多能工化の推進」、「業務手順の変更」の4つの項目に整理できます。順を追って、詳しく解説していきましょう。

01. 業務の標準化

人によって作業の手順が異なっていると、業務の品質は安定しません。作業スピードにも差が生じてしまいます。
これらの問題の解決策として、「作業習熟マニュアル」を作成しましょう。

「作業習熟マニュアル」の作り方のコツは、先ほどまとめた通りです。
4つのコツを守ることで、活用できる作業習熟マニュアルが作れるだけでなく、業務を標準化することができます。

マニュアルそのものをつくるコツは、「円滑なマニュアル作成を実現するための「事前準備」15のコツ」にもまとめられているので、参考にしてください。

02. 新人の教育

「作業習熟マニュアル」の効力が最も大きく発揮されるのが、新人の教育です。
右も左もわからない新人に、「作業習熟マニュアル」を与え事前学習をさせると、未知の作業が既知に変わり、習得する業務のイメージが湧きます。
そして「作業習熟マニュアル」の見よう見まねで業務に取り組ませると、自学自習の面白さを実感しはじめます
このアプローチは、今、各社が人材に求めている主体性を育む礎となります。

新人が自ら作業に取り組み、それでもわからないことを先輩に教えを乞うという流れになれば、先輩も新人教育が楽になるでしょう。
新人が、マニュアルをテキストにして自ら学習して作業に取り組み、不明点は先輩に指導を仰ぐようになれば、成長スピードは確実に早まります。
結果として、仕事への貢献感を実感した新人の定着率も高まります。

また、新入社員だけではなく、中堅やベテラン社員も新人に該当する時があります。それは、担当業務の変更や職場異動の場合です。
このケースでも、「作業習熟マニュアル」は、同じような効力を発揮します。

マニュアルを見よう見まねで業務に取り組む面白さについては、「マニュアル活用は楽しい!身近なマニュアルから5つの楽しさを学ぼう」で詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。

新人に予習させることで成長スピードが高まることについては、「新たな社員教育手法「反転授業」の効果的な導入&活用方法!」で詳しく解説していますので、こちらもご覧ください。

03. 多能工化の推進

特定の社員しか対処できない業務の存在は、企業にとって大いなるリスク要因となります。
その第一が、社員が退職してしまうと、業務そのものが停止してしまう。というリスク。
ベテラン社員の技術の伝承は、多くの製造業で課題となっています。この問題の解決策は、ベテラン社員の作業ノウハウをマニュアルに落とし込む以外に方法はありません。

第二は、社員が休めず有給休暇を消化しきれないというリスク。
有給休暇の取得は、働き方改革の大方針でもあり、実現できる職場環境の整備は待ったなしです。この決め手として、多能工化の推進は不可欠です。

第三が、不正の温床となるリスクです。
金銭管理、衛生管理、安全管理のレベルを高めるには、これらの業務の手順をブラックボックスに閉じず、誰もがわかるようなマニュアルにして、定期的に担当変更することで不正を抑制できます

多能工化の推進から、これらの3つのリスクは軽減されるのです。
このように「作業習熟マニュアル」は、多能工化を進める上でも大いに役立ちます。

04. 業務手順の変更

4M変更という、品質管理をする視点があります。4Mとは、Man(人)、Machine(機械)、Method(方法)、Material(材料)の頭文字の総称です。
Man(人)、Machine(機械)、Method(方法)、Material(材料)が変更された時に、品質に問題が生じる可能性が高まるので注意せよという、品質管理の基本として扱われています。

作業者というMan(人)が変わった場合の業務の品質の低下を防ぐには、準備された「作業習熟マニュアル」に従っての教育となります。
Machine(機械)、Method(方法)、Material(材料)が変更された時には、「作業習熟マニュアル」そのものを作り直す必要がでてきます。
マニュアルの改訂を怠ると、ミスやクレーム、時には取り返しのつかない事故に結びついてしまいます。「作業習熟マニュアル」の活用に当たっては、4M変更の視点を頭に入れ、適宜の改訂が必須となります。

「作業習熟マニュアル」活用による成果事例の紹介

「作業習熟マニュアル」が活用されると、チーム全体の生産性と業務品質が向上するという実例を、食材卸企業が日々おこなっているピッキング業務で解説します。

ピッキングとは、倉庫にある多品種大量の食材を顧客別に揃え、箱詰めする作業です。
箱詰めの仕方は、「箱を開けたときの見た目の美しさ」、「箱詰めの順番」、「賞味期限のチェック」など、写真と文字によって「作業習熟マニュアル」にまとめられています
作業者は大勢いるので、各人がマニュアルに記載した通りに業務をおこなっているかどうかは、現場監督者はチェックできません。

そこで、用いられる方法が検定です。この検定によって、多数の社員がおこなっているピッキング作業の実情が明らかになり、指導ポイントが特定されます。
作業の正確さや食材の取り扱い方が、「作業習熟マニュアル」通りになっているかどうか、審査員は一目でわかります。加えて、作業スピードの差も測定できます。

検定を課すことで、ピッキング作業者は、「作業習熟マニュアル」に記載されている手順を意識しながら業務に取り組むようになり、不明点があればマニュアルを再読するという習慣が身につきました。このことによりミスが減り、顧客からのクレームの発生件数も削減されたのです。

また、ピッキングのスピードを検定項目に設定したため、全社員の作業スピードが底上げされました。この結果、数十人で構成されている部門のピッキング量が大幅に増加しました。
この企業の収益性が向上したのは言うまでもありません。

この事例から、「作業習熟マニュアル」の活用を促し業績成果に結びつけるには、検定という評価の仕組みが必要であることが、おわかりいただけたのではないでしょうか。

作業習熟マニュアルに頼りきりはNG

また「作業習熟マニュアル」を整備しても、ミスやクレームは発生します
この原因は、マニュアルの手順通りに作業がおこなわれなかったか、あるいは、マニュアルに定めた作業手順そのものに問題があったのかの2つに集約されます。

マニュアルの手順通りに業務が遂行されていなかった場合には再教育を施し、マニュアルの手順に問題があったのなら、作業の仕方そのものを見直し再発防止策を講じなければなりません

まとめ

「先輩の仕事の仕方を盗め」や、「上司の背中を見て覚えろ」という時代は終わったといわれて久しいですが、果たしてそうでしょうか。
この文脈に、「仕事は自らの意志で主体性を持って身につけよ」という意味が込められていると解釈すれば、今でも通用する考え方なのではないでしょうか。

では、変えなければならないのはなんでしょう。
それは、「先輩」や「上司」を見ること

先輩や上司は、新人のために同じ作業を繰り返せないので、見る機会が限られてしまいます。従って、新人は、先輩や上司の背中から作業を学び取れないのです。
では、先輩や上司の背中を、「作業習熟マニュアル」に置き換えたらどうなるでしょうか。
新人は先輩や上司に気兼ねせず、自分が納得するまで何回でも「作業習熟マニュアル」を見られます。
この環境が、新人の成長の助けとなります。

この機会に「作業習熟マニュアル」を、新人の育成だけではなく、業務の標準化、多能工化の推進、業務手順の変更にも活用していくツールとして整備してみてください。

組織が変わる!動画マニュアル導入サービス「MANEWAL(マニューアル)」

誰でも簡単に使えるマニュアル作成ツールで、誰が見てもわかる動画マニュアルを作り、組織活性化のプロによるノウハウで組織に浸透させます。

詳細はこちら
平堀 剛

大学卒業後、電機メーカーに就職。先端技術の開発に汗を流すエンジニアを目の当たりにし、自分も何かをしたいと一念発起。学生時代からの夢、事業家(経営のプロ)を志しコンサルティング会社に転職。数多くの業界の経営実務に携わり上場(マザーズ)も経験した後に、小川とともに当社を起業。

記事一覧

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。