withコロナ時代、社員教育には動画がいい?リモートワークで働く社員への人材育成法

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4月7日に緊急事態宣言が発表されて、多くの企業が未知の領域であったテレワークに突入しました。新入社員を自宅待機にさせている企業も多いと思います。

その影響でしょうか、4月には、以下のような質問を頻繁に受けました。

「自宅待機中に新入社員に読ませた方がいい本はないですか?」
「新入社員に何かやらせておいた方がいいことないですか?」

3月上旬にイタリアやフランスでロックダウンが実施されたタイミングから準備をしても、3週間はあったので、2ヶ月分くらいのカリキュラムを作ることはできそうなものです。

それが叶わなかったのは、コロナ以前の人材育成が「同じ場所に集まって」、「面と向かって」実施することを前提に考えられていたからに他なりません。

緊急事態宣言から3ヶ月ほどが経過し、日本人の真面目さ、行儀良さも手伝って、コロナの第1波は収束へ向かっているように見えます。
しかし、ご存知の方も多いように、100年前に大流行したスペイン風邪も第3波(第1波:1918年春、第2波:1918年秋、第3波:1919年春~秋)までありました。

新型コロナウィルスは、今現在、効果的な治療方法が見つかっておらず、抗体を持った人が一定数に達していない以上、第2波があるという前提でさまざまなことに備えなければなりません。

今回は、第1波が収束した後にやってくる“withコロナ”の状況下における、人材育成のポイントについて説明いたします。
特に、eラーニングやオンラインシステムを活用し、物理的に離れた場所で働く社員に対する人材育成について考えていきます。

第1波の前は、武漢やヨーロッパの様子を対岸の火事としか見ていなかった我々も、次はそうはいきません。高確率でやってくるであろう、第2波に対する備えのお役に立てていただければと思います。

動画を使った社員教育の歴史

“withコロナ”フェーズの人材育成のポイントについてお話する前に、これまでに登場し、活用してきたeラーニングやオンラインシステムの教育メソッドの歴史について、かんたんに振り返ってみたいと思います。
eラーニングやオンラインシステムを使った教育メソッドは、動画を視聴するハードとネットワークの技術革新と共に進化してきたと言い換えることができます。

人材育成の領域に動画が使われるようになったのは1980年代。ビデオデッキと家庭用ビデオカメラの爆発的な普及によるところが大きいといえます。

それに伴って、研修会社も多くの教材用ビデオを製作しました。教える側も、あらかじめ決まったタイミングで映像を視聴してもらい、その内容を受けて個人演習やグループ・ディスカッションへ誘うファシリテーションスタイルを確立し、提供する教育の均質化が進みました。

それと並行して、家庭用ビデオカメラで作業や商談の様子を撮影し、その映像を見ながら客観的に課題を認識し、改善を促すスタイルの教育手法も広まっていきました。
それまでは、講義(=音声言語)とテキスト(=文字と僅かな写真やイラスト)でのみ理解することが当たり前でしたが、1980年代は、本格的に映像を活用した社員教育がスタートした時代です。

その次に訪れた大きな転期は、2000年代、DVDドライブ付きパソコンの普及とインターネットの大容量化です。
DVDドライブ付きのパソコン(特にノートパソコン)の普及によって、映像を見る場所の選択肢がグンと広がることになります。

自宅でも、カフェでも、座ることができれば移動中の電車や飛行機、車の中でも学習することが可能になりました。映像を収録する媒体もビデオテープからDVDへ。USBメモリやSDカードへと一気に小型化され、持ち運びが格段にラクになりました。

YouTubeに代表される動画配信の存在も見逃すことはできません。インターネット回線があれば、ビデオデッキどころか、ビデオテープやDVDがなくても動画を視聴することが可能になりました。

そして、現在。スマートホンやタブレットに代表されるスマートデバイスの普及とインターネット回線の大容量化、Wifiの普及によって、立ったままの電車の中でも、評判のラーメン屋で順番待ちをしている時でも、お風呂の中でも私たちは映像を見ながら学ぶことが可能になりました

一方、映像を使った教育メソッドに大きな進展は見られていません
ビデオがDVDに、DVDがYouTubeになっても、意欲的に学ぶ社員はFace to Faceでも、映像でも、意欲的に学ぼうとしますし、そうでない社員はそれなりに留まっています。そして、現象を解消するような特効薬は未だに生み出されていません。

ハードの進化によって、効率的に学ぶ環境は整えられましたが、効果の高い教育メソッドは開発されていないというのがeラーニングやオンライン学習の現実なのです。

学習の場所
セミナールーム自宅・カフェどこでも
ハードの進化テレビ&ビデオデッキ
(1980年代〜)
×
DVDドライブ付きPC
(2000年代〜)
スマートデバイス
(2010年頃~)

動画を使った社員教育の課題

ここではeラーニングやオンライン学習による社員教育が、思ったような結果に繋がっていない理由について考えていきましょう。大きく4つの問題があると考えられます。

01. コンテンツの問題

ひとつ目は、コンテンツの問題。
以前、私は社会保険労務士の資格を取ろうと某有名専門学校へ通ったことがあります。その学校のカリキュラムでは、最初の3~4回は、ビデオ講義でした。
そこそこ高い授業料を支払い、プライベートの時間を削って通学したので、相応の気合いは入っていたと思うのですが、私はビデオ講義の時間の大半を、舟を漕ぎながら過ごしてしまいました。

社労士の勉強は、労働関連法規を中心に学びます。法律の話は、ただでさえ難しく、学ぶべき情報の量が多いにもかかわらず、それを無理やり3、4回で終わらせるような構成になっています。これでは学習意欲も湧きません。

多くの映像学習コンテンツに共通しているのは、研修に割り当てることができる尺の長さから逆算して作られているということです。専門学校の授業の1コマが120分だとすると、本来なら150分を要するコンテンツであっても120分に押し込められてしまうのです。

02. 教え方、講義の質の問題

2つ目は、教え方、講義の質の問題。これも専門学校のビデオ講義の思い出からお話します。画面の向こうの講師の話し方が、とにかく凡庸で印象に残らない。

進め方や使う言葉、アピアランスのつくり方など、何の工夫も感じられずに情報が記憶されないのです。親戚の法事に参列して、お坊さんのお経を聞いているような感覚に苛まれました。

1980~2000年くらいは、“リアルの講義をビデオに撮って、それを再生するだけ”というスタイルが多かったので、リアルな講義が面白くない講師の講義は当然のように面白くありませんでした。
一方で、リアルな講義が面白いと評判の講師であっても、ビデオになると持ち味が消されてしまって面白くないということも起こります。反転学習の有効活用など、きっと映像コンテンツに合った教え方があるのでしょうね。

03. 学習の「量」の問題

3つ目は、学習の「量」の問題。学習には「質」と「量」の両方が必要です。
映像教材の活用は、有名講師やコンサルタントのコンテンツを利用できるので、残念な講師にやらせるのと比較すれば「質」は劇的に改善できます。
質の高い講義を聞くことができれば、これまでなかなか理解できなかったことが、ちょっとしたキッカケでスカッと分ったり、まったく興味のなかった分野に対して強い関心を持つようになったりという効果が期待できます。

しかし、ポイントを理解した後に、何度も反復し、「量」をこなすことによって真の実力になっていきます。
ところが、映像での学習では、どれくらい量をこなすかの判断は受講者個人の裁量に任されてしまうため、分かった気になったところで止まってしまう人が多いのです。

04. 日本人の気質の問題

4つ目は、日本人の気質の問題。これについては、統計的なデータも、学術的な裏付けもありません。まったくの私見です(笑)

多くの日本人にとって、勉強は先生や学校、親から「やらされるもの」、定期テストや受験が控えているから「仕方なくやるもの」というマインドセットがかけられているように感じています。
私の人生をふり返ってみても、主体的学習者と呼べる人は、ごく少数だったと記憶しています。皆さんはどうでしょうか?
蛍雪の光を灯し、寸暇を惜しんで、学ぶような人がどれくらいいたでしょう?

そういう人にとってはeラーニングやオンライン学習システムは、この上なくありがたいツールですが、「勉強=必要に迫られてやること」というマインドセットをされた多くの日本人にとっては、口では「便利だね」、「あったらいいね」というものの、実際には使うことのない代物なのではないでしょうか。

eラーニングやオンライン学習は、情報を受け取る環境(ハードやネットワーク)は、劇的に進歩を遂げましたが、オンライン環境にマッチした教育コンテンツ制作やインストラクティング、ファシリテーションのスキル、および受講者の学習に対する意欲や主体性といった能動的態度に大きな変化はなく、思ったような成果を上げていないといえるでしょう。

“withコロナ”フェーズの社員教育がぶつかる壁

今後、“withコロナ”フェーズに突入し、国が提唱する「新しい生活様式」の中で人材育成を進めていく上で、私たちは何に注意しなければならないのでしょうか。
ここでは、“withコロナ”フェーズの社員教育がぶつかるであろう壁について考えてみたいと思います。

01. 集まることができない

ひとつ目の壁は、「集まることができない」です。
緊急事態宣言が解除されたとしても、三密を回避する生活スタイルは継続しなければならないでしょう。

「集まること」、「集まるために移動すること」に恐怖を感じる社員も出てくると思います。十分なソーシャルディスタンスを保てる研修会場を確保することも都市部では困難になってきます。
「集まって研修をやるよ」という声を掛けるだけで、「うちはブラック企業」などという内部告発が出てしまう可能性も否定できません。

02. 組織として一体感、上司と部下の信頼感が薄れる

2つ目の壁は、「組織として一体感、上司と部下の信頼感が薄れる」です。仕事はしているものの、時間のほとんどを自宅で過ごすようになると人生の軸足が家庭に移り、無意識のうちに会社へのロイヤリティが低下することが予想されます。

コロナ以前にオフィスに出社していた社員ですらそうなるわけですから、“withコロナ”フェーズに入って、オンラインで選考を受けて、テレワークを前提に入社してきた社員にとって会社や上司は、単なる仕事の納品先になってしまうのかもしれません
上司や先輩との人間関係も変化するでしょう。

「同じ釜の飯を食う」ではないけれど、時には、徹夜して企画書を作成したり、客先へ一緒に頭を下げにいったり、その過程で叱咤激励や人間味を感じるやり取りを積み重ねたりすることで作っていた信頼関係は徐々に薄れていくと思われます。

03. OJTが激減する

3つ目の壁は、「OJTが激減する」です。OJTとは「On the job training」の略で、職場で実務を通じて社員教育をすることをいいます。

「背中を見て覚える」、「仕事のやり方を盗む」といった言葉は、平成の後半でも死語に近かったですが、令和に作られる“withコロナ”フェーズの新しい生活様式では、“上司や先輩の背中”がそばにないという状況が当たり前になります

上司も部下が仕事をしている様子を直接見る機会が減るため、これまでのように問題発見ができません。その結果、部下は、ブラックボックスとなった家庭の中で、非効率な仕事の仕方、間違った仕事の仕方を延々と続けてしまうなんてことが起きる可能性が高まります。

04. 組織内の情報共有が滞る

4つ目の壁は、「組織内の情報共有が滞る」です。これは、ナレッジデータベースを整備するか否かというレベルの話ではありません。

ナレッジデータベースがあっても情報共有が促進されていない企業は数多存在します。どちらかというと、もっとベタな話です。
一緒にランチをする、コーヒーブレイクをする、喫煙所でタバコを吸う、飲みに行く、移動する、ちょっと立ち話をするといった行為に付随していた「雑談」が激減します。

無駄話は不要でしたが、「そういえば、あの話、知ってる?」から始まる「仕事に関する雑談」は組織内の情報共有に、思った以上に貢献していました

コロナ以前でも、平然と「聞いてません」と回答する社員に頭を悩ます経営陣、管理職は多かったと思います。
今後は、オンライン会議や研修の中で意図的に雑談を仕掛けたり、情報発信の仕組みを整えていかなければ、組織のナレッジや重要情報は流通しなくなってしまうでしょう。

4つの壁を乗り越えられなければ、「未熟な俺流」になってしまう

そして、これら4つの壁を乗り越えられない組織には、「未熟な俺流」が蔓延することになります。
俺流とは、「私のやり方、私の流儀」という意味で、監督やコーチの指導とは一線を画し、我流を貫いて三冠王になった元プロ野球選手、落合博満氏の代名詞です。
ちなみに本人は一度も「俺流」という言葉を言ったことがありません(笑)

落合選手は、三冠王や日本人初の1億円プレーになるなど、「俺流」で卓越した結果を残しましたが、“withコロナ”フェーズに増加するのは“未熟”な俺流なのが厄介です。

テレワークで、仕事のプロセスが見えなくなる分、アウトプットで評価する傾向が強まるでしょう。落合選手のように結果を残す(=質の高いアウトプットを出す)ことができる社員は問題ありません。

しかし、組織が求める水準のアウトプットが出せない社員には指導が必要になります
OJTも受けたことがなく、ベンチマーク対象となる上司や先輩の仕事ぶりを見たことがない、最新のナレッジも知らない社員に信頼関係を構築できていない上司・先輩の指導や助言は刺さるのでしょうか?

中には、素直に聞く社員もいるでしょうが、きっと「未熟な俺流」はジワジワと増加していくことになるでしょう。

“withコロナ”フェーズの社員教育のポイント

「未熟な俺流」を増やさないために、それぞれの壁にどう立ち向かっていけばいいのか?
ここからは、4つの壁(=課題)への対応策を解説します。

まずは以下の表をご覧ください。

壁(=課題)課題解決のポイント有効なツール
集まれない
  • 集合形式でやっていたものを意図的にオンラインに置き換え、このスタイルに慣れる
  • 集まらないこと前提とし、既存の学習メソッドの活用方法研究する(EX.反転学習の活用)
  • 資金を投下して、環境の問題(ハード・Wifi)を解消しておく
  • オンラインコミュニケーションに慣れ、苦手意識を払しょくしておく(会議や飲み会、ランチなどから体験)
  • オンライン会議システム(Zoom、Skype、Whereby、Google Meetなど)
  • Eラーニングシステム
  • 動画配信システム
組織としての一体感、上司と部下の信頼感が薄れる
  • お互いのことを良く知っておく、仲間に興味を持つ
  • 人となりが理解できる人事データベースならぬ人柄データベースの構築(ライフプランの公開など)
  • トップや影響力があるメンバーのメッセージを動画配信
  • 理念ムービー・ビジョンムービー製作と配信
  • 休憩時間の導入と休憩時間中の社員交流(=雑談の場の設定)
  • 人柄データベース
  • 動画配信システム
  • オンライン会議システム
  • モチベーションシステム
OJTが激減する
  • ベストプラクティスの可視化(→動画マニュアルの本領発揮)
  • 動画マニュアルを使った初期教育プログラムの構築
  • withコロナ時代のテレ・マネジメントマニュアルの作成
  • 検定制度(リアルとオンラインのハイブリッド)
  • 動画マニュアル作成アプリ
  • テレ・マネジメントマニュアル
組織内の情報共有が進まない
  • ナレッジデータベースの構築(動画マニュアル作成アプリでもOK)
  • 社内試験制度(リアルとオンラインのハイブリッド)
  • オンライン会議で確認(テレマネジメントのひとつ)
  • ナレッジデータベース
  • オンライン会議システム

この対応を進めていく上で重要になるのが、システムやクラウドツールの活用です。
すでに、「HR-Tech」と呼ばれる領域のサービスがたくさんリリースされています。

HR-Techとは、HR(Human Resource:人材)と テクノロジー(Technology)を掛け合わせた造語です。
採用や社員教育、人事評価、労務管理などの人事関連業務において、ビッグデータの解析や人工知能(AI)、クラウドなどの最先端テクノロジーを活用し、人事にまつわる課題を解決するためのソリューションやサービスを意味します。

時間が経てば、コロナの前のようなFace to Faceのマネジメントができるようになる、などと楽観せずに、HR-Techを取り入れた新しいマネジメント、人材育成の仕組み作ることを考えてみてください。
特に、ITに苦手意識のある経営者へは強くお願いしたいと思います。

まとめ

“withコロナ”フェーズの人材育成は、社員の働く環境、社内の人間関係、時間の使い方、コミュニケーションの手段などいろいろなものが根本的に変わると予想されます。

しかし、人材育成の目的は変わりません。
それは、どんな環境下であっても、自分の頭で考え、成果を出せる強い人材を育成することです。

そのために、どんな問題が起きるのか、起きているのかを冷静に分析し、問題の本質を理解した上で、解決に最適なツールを活用していく、場合によってはこれまでの当たり前を捨て、新しい当り前を取り入れる勇気が求められるのです。

小川 晴寿

経営コンサルティング会社に8年半勤務した後、ベンチャー企業の取締役として経営に参画。同社が3年で東証マザーズへ上場を果たす一翼を担う。その後、“やりがいを感じられる職場を1つでも多く増やしたい”という想いから、平堀と共にアッシュ・マネジメント・コンサルティングを設立。

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