環境に適応するチームをつくるための「スキルマップ」の作り方・活用方法

  1. マニュアル
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「仕事はできる人に集中する」といわれますが、これはどの組織にも共通した傾向なのではないでしょうか。
仕事を依頼する立場に立つと、業務を正確かつ迅速に処理してくれる人に仕事をお願いするのは、ある意味自然な心理だからです。

このように仕事が集中しているメンバーに対して「君にたくさんの仕事が依頼されるのは、みんなが君を優秀だと評価している証だよ」と、上司が労いの言葉をかけるシーンがありますが、これは、とても危険なことです。

野球に例えると、エースピッチャーを、毎試合連投させるようなことだからです。
このままでは、エースピッチャーは肩を痛めて、戦線離脱を余儀なくされてしまいます。

仕事が集中している人材も同様に、いつかは限界に達してしまいます。

このような事態をおこさないためには、他のメンバーにも仕事を振れる体制を整える必要があります
この計画を練るうえで有効なツール、それがスキルマップです。

スキルマップがあれば、チーム構成メンバーが担当できる業務が一覧となり、各人の業務分担の実態を全員が把握できるので、担当業務の変更や追加などの業務の組み換えを、チームメンバー全員の納得のもとに実行できます

全員の納得感はチーム力の礎にもなるので、モチベーションツールとしても、スキルマップの活用を検討してみてください。

スキルマップとは

スキルマップとは、チームメンバーが保有している技能を一覧にまとめた表です。
技能というと難しく捉えられてしまいますが、チームメンバーがおこなっている業務を一覧にするというイメージで作成すれば、スキルマップはかんたんにできます。

メンバーごとに担当できる業務を一覧にすれば、特定のメンバーに集中している業務を把握できるだけではなく、手薄になっている業務もあぶり出せます。
スキルマップがあれば、チームメンバーへの業務配分のバランスをとることもできます。
そして、チームメンバーの能力向上目標を定めるシートとして、キャリア開発にも役立ちます

スキルマップの効能と作り方、そしてスキルマップの活用と極め方について説明しますので、スポーツチームの育成コーチになったつもりで、スキルマップを作ってみましょう。

スキルマップの効能

スキルマップの効能は、以下の3段階が挙げられます。

  1. チームメンバーごとの担当できる業務と技能の一覧化(課題特定)
  2. 各チームメンバーの技能向上目標の明確化(目標設定)
  3. 全体最適組織の推進(全体最適マネジメントの実践)

ひとつひとつ解説していきましょう。

01. チームメンバーごとの担当できる業務と技能の一覧化(課題特定)

製造業務を例にすると、現場の作業員によって、扱える機械や作業の習熟度が異なります。

また、サービス関連業務でも、商品の発注業務から顧客の問い合わせ対応など、各社員が担える業務の幅と技能には相当の差があります。
各社員が担当できる業務や技能の差を感覚的に捉えていては、業務の品質を向上させる具体的な手立ては打てません。

そこで、チームメンバー毎の担当できる業務と技能を一覧にするスキルマップの作成が求められるのです。

02. 各チームメンバーの技能向上目標の明確化(目標設定)

スキルマップによってチームメンバーが保有している技能の実情が明確になれば、強化すべき技能の特定は容易となります。

技能の習得に時間がかからない業務や、ある特定のメンバーしかできない作業の負荷を軽減させるために強化する技能をチームメンバー毎に定めましょう。
向上させる技能の目標が明確になると、メンバーのやる気も増します。

また、技能向上目標が達成されると、特定のメンバーしかできない作業がなくなり負荷が軽減されるだけではなく、メンバーの突然の欠勤にも他のメンバーが代わって業務をおこなえるので、チームに安心感と安定感が生まれます。

03. 全体最適組織の推進(全体最適マネジメントの実践)

スキルマップの活用によって、チームメンバーが習得している技能のバランスが整いだすと、このチームを統括するマネジャーは、チームメンバーの異動を割けたいという考えを持ちだします。

チームメンバーを手塩にかけて育ててチームの総合力を高めたのですから、このマネジャーの気持ちは理解でます。

ところが、この状態を放置すると、チームメンバーが特定のチームに固定化されてしまうため、チーム内にマンネリ感が醸成されてしまいます

マンネリ感の蔓延は日々の業務をおざなりにしてしまうだけでなく、新しい取り組みを嫌がるというように、改善活動に否定的な態度として現れます。
こうなってしまっては、スキルマップを用いてチーム力を向上した意義が根本から崩れてしまいます。

そこで、全社的な観点にたって、人員配置の組み換えを適宜おこなう必要性が出てきます。
全社的な人員配置の見直しをする際にも、部門ごとに活用されているスキルマップが効力を発揮します。

スキルマップの作り方

スキルマップの作り方は、難しくありません。
以下の手順を参考にして、気軽な気持ちで作成してみてください。

まずは、スキルマップを完成させて、各メンバーの技能の実情を記入してみて不備があれば、スキルマップを修正すればいいのです。

4つの手順については、製造部門を事例にして解説しましょう。
この製造部門は、6名のメンバーで構成されて、それぞれが異なる機械を扱っていると仮定します。

01. 部門業務の洗い出し

機械名作業者名
佐藤鈴木田中高橋中村山本
機械1
機械2
機械3
機械4
機械5
機械6

機械の名前と作業者名を記入する。

02. 業務遂行の可否の記入

機械名作業者名
佐藤鈴木田中高橋中村山本
機械1×××××
機械2×××
機械3××××
機械4××××
機械5××××
機械6××××

6名の作業者が扱える機械と扱えない機械を区分けする。

03. 業務遂行技能の評価基準の設定

機械名作業者名
佐藤鈴木田中高橋中村山本
機械1ACCCCC
機械2SACBCC
機械3CCACBC
機械4SBCCCC
機械5SCBCCC
機械6CACACC

技能の評価は、
他者を指導できる(S)、一人前にできる(A)、指導を受けながらならできる(B)、未習得(C)の4つに区分します。

2つめの手順である、業務遂行の可否を〇と✕で分けたよりも、この製造部門の技能の実情が明確になりました。

04. 個人別技能向上目標の設定

機械名作業者名
佐藤鈴木田中高橋中村山本
機械1A→SCC→BCCC
機械2SA→SCB→ACC
機械3CCAC→BBC
機械4SB→ACCCC
機械5SCB→ACCC
機械6CACACC→B

この製造部門は、機械1を扱えるメンバーが佐藤氏のみで、しかも、佐藤氏は機械4と、機械5の指導を、鈴木氏と田中氏におこなっている状況です。

万が一、佐藤氏が出社できなくなったら、この製造部門は立ちいかなくなります。
佐藤氏に偏った業務の負荷を軽減させるために、個人別の技能向上目標の設定が求められます。

矢印(→)の先に示されているのが、技能向上目標となります。
この目標を達成すれば、佐藤氏の負担がかなり軽減され、機械作業の負荷バランスが取れるようになることは一目瞭然です。

製造部門の事例を紹介しましたが、設計部門でも、事務部門でも、営業部門でも、実行している業務を列挙して、その業務の可否を各人毎に〇×で記入する流れは同じです。
このフォーマットを活用して、まずは、業務を洗い出してみてください。

スキルマップの活用方法

スキルマップの作成によって、各メンバーが取り組める作業の可否と習熟度が明確になりました
そして、この実情を基にして、個人別の技能向上目標も定められました。

次におこなうのは、スキルマップの最終工程で定めた個人別の技能向上目標を達成させるための教育訓練計画の作成です。
技能向上目標を絵に描いた餅にしないために、技能習得期日を定め、技能習得のための訓練計画を作成しましょう。

教育訓練計画は、以下の手順で作成します。

  1. 技能習得期日の設定
  2. 技能習得のための訓練の実施

技能習得の期日を設定する上で、当該業務の習得にこれまで取り組んできたメンバーが習得に要した時間や期間の記録があれば、それを基に習得期日を定められます。
記録がない場合には、当該業務の難易度から習得にかかる時間を見積もり、期日を定めることになります。

ここで重要なことは、作業マニュアルの存在です。
作業マニュアルがあれば、業務の難易度も明確になります。
従って、習得に要した時間の記録がなくても、技能習得に要する時間のおおよそを見積もることが可能となります。

作業マニュアルは、当該業務の技能を習得する上で必須のテキストですので、マニュアルが整備されていない場合には、マニュアルの作成からはじめましょう
技能習得のための訓練は、作業マニュアルを基にして実施します。

まずは、自分でマニュアルを読み、自力でやってみることから始めさせることをお勧めします。

自力でできるところまで作業を進め、マニュアル通りに作業をしても求められている基準で作業ができないところを指導責任者に質問するという流れで訓練を繰り返すと、習得までにようする期間が短くなります。

また、自力で技能習得に向かう試みは、できるようになった際の達成感が高まります。
技能習得の期日を定めて、作業マニュアルをテキストにし自力習得を基本スタンスにし、不明な点の指南を指導者から受ける。
このような訓練の実施から、チームメンバーの主体性と達成感が引き出されます。

スキルマップの活用で、もう1点重要なポイントがあります。
それは、技能習得の有無を判定する検定基準を設けることです。

検定基準は、以下の3項目で定めて評価するといいでしょう。

  • 作業マニュアルに定められた手順通りに作業をおこなえているか
  • 標準時間内で作業を完了させられているか
  • 作業によって完成したアウトプットの品質は基準値を満たしているか

目標とした技能習得期日の1週間前に仮検定をおこなうこともおすすめです。

合格基準に満たない作業箇所が洗いだされ、検定に合格するための追い込みに拍車がかかるだけではなく、検定に臨む緊張感も増し、合格した際に得られる充実感も高まるからです。

スキルマップの活用を極めると

スキルマップによるチームメンバーの技能向上をはかる訓練のサイクルを回すと、実践知が蓄積してきます。

実践知とは、作業の実践を通じて得られるノウハウという意味です。
世の中には、「〇〇すれば、仕事が効率化する」というようなノウハウ本が出回っています。

これらのノウハウは、著者が体験した実践知を基にまとめられているので、読者の職場に置き換えて再現するのは簡単ではありません。
仕事を効率化する視点としては参考にしつつも、実際に効率化させる作業の進め方は、独自に考案しなければなりません。

作業マニュアルを基にしてスキルを向上させる訓練を繰り返していくと、技能習得に要する時間を短くする訓練方法や、作業手順そのものの抜本的な見直し、すなわち、業務改善に結びついてきます
これが、まさに自社で開発される実践知となるわけです。

また、スキルマップの効能の③である、全体最適組織の推進(全体最適マネジメントの実践)についても、スキルマップの活用を極めると創出される大きな成果となります。

各部門が、スキルマップの活用が徹底されている会社をイメージしてみてください。
下記のように2つの部門のメンバーのスキルの実情が可視化されると、ある人材の部門間異動により、会社全体の負荷バランスの均衡がとれる方向性も見出せます。

製造1グループ

A氏B氏C氏
作業1×
作業2
作業3

製造2グループ

D氏E氏F氏
作業1××
作業2××
作業3×

表の通り、製造1グループは作業習熟したメンバーで構成され、製造2グループは作業習熟度の低いメンバーで構成されていたとします。

この場合、会社の全体最適の観点から人員の配置を見直すと、製造第1グループのB氏を製造第2グループへ、製造第2グループのE氏を製造第1グループに異動すれば、両グループの負荷バランスが整います。

製造1グループ

A氏E氏C氏
作業1××
作業2
作業3×

製造2グループ

D氏B氏F氏
作業1×
作業2××
作業3

以上のようにスキルマップの活用を極めると、自社独自の実践知の蓄積をはかれるとともに、全体最適の人員配置も計画できるので、作業品質の維持管理を全社的に推進するだけではなく、あわせて生産性の向上にも結びつくのです。

まとめ

各企業に求められる、商品・サービスの形態や品質は、時間の経過とともに変化していきます。この市場の変化に対応することで、企業は生き残れます。

冒頭に記した通り、製造業からサービス業まであらゆる業種で求められる品質は、仕事に従事する人たちの技能によって決定づけられるのは、いつも時代も同じです。

ますます激化する市場環境の変化に適応していくチームを創る礎として、今回ご紹介したスキルマップを活用してみてください。

平堀 剛

大学卒業後、電機メーカーに就職。先端技術の開発に汗を流すエンジニアを目の当たりにし、自分も何かをしたいと一念発起。学生時代からの夢、事業家(経営のプロ)を志しコンサルティング会社に転職。数多くの業界の経営実務に携わり上場(マザーズ)も経験した後に、小川とともに当社を起業。

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