サービス業の長時間労働を減らす!時短のコツとは?

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働き改革が叫ばれる中、経営者や上司から、「もっと時短を意識して取り組むように」や、「残業時間を減らすように」といわれても、「どうすれば時短につながるかわからない」、「業務が多くて、時短に取り組む余裕すらない」といった声が聞こえてきます。

私も何とか仕事をやりくりして、時短に着手。時間がかかっている業務の手順を見直しや、やらなくてもなんとかなりそうな作業を止めました。

結果、ひとつ一つの業務の時間は少し短くなりましたが、労働時間自体は短くなりませんでした。
作業時間は短くなっているはずなのに、労働時間は短くならない。「実は仕事自体が増えているのでは・・・」と頭をよぎったこともありました。
皆さんも同じような経験があるのではないでしょうか。

「時短」という言葉をインターネットで調べると、育児・料理・掃除など家事の時短テクニック、残業を減らすための働く時間の短縮、育児や介護をしながら仕事を続けるための時短勤務制度が出てきます。

これらの時短の中でも今回は、「サービス業の長時間労働を減らすための時短」について、ご紹介します。

働く時間の時短とは

「働く時間の時短」とは、残業時間を減らし、仕事を所定の労働時間(8時間)内に収めることを指します。

多くの人が、働く時間を短くしようとすると、一つひとつの業務にかかる時間を短くしようと取り組みます
例えば、Excelを使う事務作業ならば、計算式を駆使する、ショートカットキーを使うなどする方も多いでしょう。

会議であれば、事前に会議のテーマを共有や、資料を配布して読み込んでおくように依頼する人もいます。
会議の準備に時間をかけすぎないように、パワーポイントで会議資料を作ることを禁止する会社もあるようです。

実は、このように一つひとつの業務の時間を短くすることは、働く時間の時短に直結するとは限らないのです。

特に長時間勤務やサービス残業が多いといわれている飲食・宿泊などのサービス業では、目の前のお客さまを相手に仕事をするため、いつ、どのくらいの人数が訪れるかがわからないお客さまに対して、自分たちのペースで仕事を進めること自体が難しく、労働時間の時短は困難です。

実際、時短のやり方がわかっている経営者や管理者はめったにいません。結果、「時短を意識して仕事をするように」という掛け声だけになっているのだと思われます。

なぜ、時短が求められるようになったのか

それでは、なぜ、時短が求められるようになったのでしょうか?
時短が求められるようになった背景を確認しましょう。

きっかけは、日本の労働人口が減ったことです。それにより、以下の2つの項目を実現することを目指し、時短が求められるようになりました。

  • 女性・高齢者・外国人が働ける環境の整備
  • 従業員一人ひとりの生産性向上・労働の質の向上

もう少しかみ砕いて説明します。
まず、女性・高齢者・外国人が働ける環境の整備について。

日本では、2000年頃に働き手となる生産年齢人口(15~65歳)が減少し始めました。それに対して企業は労働力を確保しようと、女性・高齢者・外国人の採用を進めたのです。
しかし、長時間労働・サービス残業が当たり前の職場環境では、女性・高齢者・外国人の採用・定着は難しく、働く環境の整備が求められました
その一環として、長時間労働の是正に目が向けられるようになります。

「1億総活躍社会の実現」という言葉で日本政府が推進しようとしている取組みが、これに該当します。

次に、従業員一人ひとりの生産性向上・労働の質の向上についてです。
企業は、労働人口減少に対して、女性・高齢者・外国人の採用だけでなく、従業員一人一人の稼ぐ力、つまり生産性を上げることで対処しようとしました。長時間労働を是正して、労働の質を高めることを目指したのです。

このような社会の大きな変化の影響を受け、一昔前の「夫は外で働き、妻は家を守る」という考え方から、今は「夫婦共働き」という考え方が当たり前になっています。夫も仕事だけでなく、家事・育児を担い、夫婦でバランスを取ることが求められています。

その影響もあり、もっぱら仕事ばかりしていた夫も「仕事ばかりではなく、プライベートも充実させたい」、「家族や子どもとの時間を確保したい」と考える人が増え、長時間労働の職場を避ける傾向が徐々に強くなっていると思われます。
実際に多くの家庭でも、このような生活スタイルや価値観の変化が起こっているのではないでしょうか。

私自身も、以前は寝る間を惜しんで仕事をするのが当たり前でした。フルタイムで働きながら、家事・育児も担っている妻とのバランスが取れず、上手くいかないことも。
このままではマズイと思い、一時は転職も考えましたが、家事・育児のバランスを見直すことで、何とか立て直すことができました。
今では、妻や娘ともっと多くの時間を過ごしたいと思う働き方ができています。

このように、労働人口の減少がきっかけとなり、時短が求められるようになったのです。

ところが、多くの経営者や管理者は時短のやり方を知らずに、「もっと時短を意識して取り組むように」とか、「残業時間を減らすように」と現場に求めます。
その結果、現場では自己流で時短に取り組んでしまい、間違った時短が浸透してしまっていることもあるようです。

間違った時短をしていませんか?

間違った時短とは、一つひとつの業務時間の短縮が、労働時間の短縮につながっていないことを指します。
意外と多くの人が知らず知らずのうちに、間違った時短に陥っているものです。

多くの人は、「労働時間の時短」を進めようとすると、以下のような改善に取り組もうとします。

  • 一つひとつの作業の無駄を減らし、作業にかかる時間を減らす
  • 一つひとつの作業の習熟度を高め、作業のスピードを上げる

しかし、これらは必ずしも「労働時間の時短」につながるとは限りません。なぜなら、サービスはお客さまが訪れたときにしか提供できないからです。少しわかりにくい部分なので、そば屋を例に考えてみましょう。

そば屋の調理スタッフが、そば1杯の調理時間を5分から3分に縮めたとします。
しかし、お客さまが10分おきにしか訪れない場合、調理時間を短くすると、待ち時間が増えることになってしまいます。
サービスは目の前にいるお客さまにしか提供できないため、お客さまがいつ訪れるかわからない状況で、ただ作業時間を減らしても、待ち時間が増えるだけになりかねないのです。

このように、作業にかかる時間を短くしても、働く時間の時短にはつながらないケースがあります。
間違った時短に陥らないためには、正しい時短を知る必要があります

正しい時短とは

間違った時短とは、ただ単に一つひとつの作業時間を短くすることに取り組んだ結果、待ち時間が増えてしまうということでした。

では、正しい時短とは、何をすれば良いのでしょうか。
正しい時短とは、生産性を上げることです。

生産性とは、「付加価値÷投入時間」です。付加価値とは、お客さまからいただいたお金(売上)から、材料費などの原価を差し引いたもの。投入時間とは、その売上を上げるために、使った時間のことを指します。

生産性を上げるためには、付加価値を増やすか、投入時間を減らす必要があります

そば屋を例に考えてみましょう。
付加価値を増やすには、1日の来客数を30人から40人に増やすか、お客さま1人当たりの売上を700円から800円を増やすことが必要です。
もしくは、投下時間を減らすために、1日の来客数30人で1人当たりの売上700円のままでも、営業時間が12時間から10時間に減らせば、生産性を上げることができます。

このように、正しい時短とは、一つひとつの仕事の時間を短くするだけでなく、1日の付加価値を増やすこと、もしくは1日の営業時間を短くするための改善が必要です。

正しい時短を実行するための3つのアプローチ

ここからは、正しい時短をするための具体的な方法について、確認していきましょう。
正しい時短を実行するための3つのアプローチをご紹介します。

  • 待ち時間を把握する
  • マルチタスク化で待ち時間を減らす
  • 顧客満足を強化する

ひとつずつ詳しく解説します。

01. 待ち時間を把握する

まずは、待ち時間の実態をデータで把握することから始めましょう。そのためには、お客さまからの注文数とスタッフの投入人数を時間帯別に示した「注文数・人員推移グラフ」を作成します。
このグラフにより、待ち時間が多くなっている時間帯が明確になります。

このデータを算出する理由は、人は感覚的に忙しさを捉えてしまう傾向があるから。
1日の中で忙しい時間があると、お店のスタッフは「今日も忙しかった」と認識するでしょう。実際は、暇な時間があったとしてもです。

お店のスタッフに今日の待ち時間について質問すると、「忙しかったら、そんな余裕はなかった」と回答する人が多いでしょう。
このように人は忙しさを感覚的にとらえてしまうため、データを用いて、正確に待ち時間を把握することが必要になります

02. マルチタスク化で待ち時間を減らす

待ち時間を正しく把握したら、次にその待ち時間を減らすために手を打ちます。
それがマルチタスク化です。

マルチタスク化とは、一人のスタッフが自分の担当する仕事だけでなく、他の担当の仕事も対応できるようにすること
マルチタスク化が実現すると、部署を越えてスタッフが移動して、他部署の仕事をこなしながら、一瞬の業務量の変動に無駄なく対応できるようになります

例えば、餃子の王将。
優秀な店長は、ホールスタッフとキッチンスタッフをマルチタスク化しており、ホールスタッフがキッチンの業務も、キッチンスタッフがホールの業務も対応できるようにしています。

餃子の王将では、ランチタイムに多くのお客さまが訪れます。
12時のランチタイムは、お客さまが集中するので、ホールスタッフだけでなく、キッチンスタッフもお客さまにお水とおしぼりを出す、注文を取るなどのホール業務をおこないます。
全員で対応することにより、お客さまをスムーズに案内することができるのですね。

お店が満席になり、すべてのお客さまの注文を取り終わったら、ホールスタッフは、お店の外で行列待ちとなっているお客さまに注文を取りに行きます。
その後、キッチンに入り、餃子の調理といったホールスタッフでもできる業務をおこないつつ、できた料理を次々とお客さまのもとに運びます。

12時25分頃、食べ終わったお客さまが会計を済ませようと、レジ前に並び始めます。
ホールスタッフが会計をおこなっている間、キッチンスタッフはホールに出て、食べ終わったお皿やテーブルの片付けを手伝い、行列待ちのお客さまを店内に案内できる状態を整えます。
片付けた後、キッチンスタッフは調理場に戻り、お客さまの料理を作り始めます。

このように、ホールスタッフとキッチンスタッフが、互いにマルチタスクで対応することで、少しの待ち時間を有効活用して、仕事を進めているのです。

他にもホテルであれば、フロント・客室・厨房・レストラン・見送り・清掃・施設管理などさまざまな業務があります。
スタッフは、それぞれの持ち場を守るだけでなく、マルチタスク化することで、お客さまの流れ(フロントから部屋、風呂、レストラン)に合わせて、人員を移動させて、対応することができます
そうすることで、待ち時間を作らず、少ない人員でお客様に対応することができるでしょう。

このように、マルチタスク化により、自分の担当以外の業務を手伝うことで、待ち時間を減らしつつ、職場全体の生産性を高めることが可能になります

03. 顧客満足を強化する

正しい時短とは、生産性を上げることでした。そして、生産性を高めるためには、付加価値を上げること、つまり、お客さまに提供しているサービスを見直し、お客さまの満足度を高めることも大切です

今、スタッフがおこなっている行動が、お客様の期待・要望にマッチしたものであれば、それは顧客満足=サービスになっているといえるでしょう。
しかし、お客さまの期待・要望にない行動をスタッフがおこなっている場合は、無駄な仕事になります。

また、お客さまの期待・要望があるにも関わらず、スタッフがそれに沿った行動をしていなければ、機会損失(=お客さまの不満)になってしまいます。

このように、今おこなっているお客さまに対する行動(サービス)が、「削減しても顧客満足に影響しないものか」、「強化することで顧客満足度が上がるものか」を棚卸しすることが重要です

今すぐできる、「働く時間の時短」を実行するコツ

「働く時間の時短」を実行するコツとして、現場にとって、やりやすいことから着手すると良いでしょう
例えば、マルチタスク化ならば、換気扇の掃除やエアコンのフィルター掃除のような10分程度でおこなえる仕事をリストアップし、待ち時間に取り組めるようにします。

少しずつ自分の担当以外の仕事に着手し、徐々にマルチタスク化の範囲を広げていけば、現場にとっては負担感が少ないため、受け入れやすいはずです

すでに時短に取り組んでいる上級者の方は、移動中の待ち時間を有効活用するために、携帯電話でのメールチェック・返信、携帯電話のメモ帳を使っての会議準備(問題提起、課題・解決策の整理)に取り組むのも良いでしょう。
電車で移動される方は、電車のつり広告を見ながら、チラシやPOPのキャッチコピーやデザイン案を考えることもできます。

職場で週次のミーティングがあれば、来週の一週間で待ち時間となり得る時間を想定し、その時間で処理する仕事を探しておくという習慣を身につければ、職場全体で継続的に生産性を高めることができるでしょう。
個人としての取組みを進めながらも、職場全体での取り組みに展開していくと、成果も大きくなります。

私の職場では、毎週金曜日の夕方にミーティングをおこなっており、その中で「来週のタスク&スケジュール」というテーマがあります。

そこで各人のタスクとその所要時間、スケジュールを確認し合い、ボトルネックとなりそうなタスクについては、細かく相談の時間を設定する、想定した時間よりも短く終わらせるための方法について、話し合うなどします。

また、待ち時間となりそうなケースは、緊急性は低いが重要性の高いタスクを依頼するなどして、職場全体で生産性を高める取り組みを行っています。

まとめ

今回は「サービス業の長時間労働を減らすための時短」をテーマにご説明しました。

多くの現場では知らず知らずのうちに、「一つひとつの作業にかかる時間を減らす」という間違った時短に陥っています。それでは成果につながりません。
なぜなら、それが労働時間の短縮や売上向上の直結しないケースがあるからです。

正しい時短とは、生産性を上げることでした。
そのためには、お店の1日の売上(付加価値)を増やすこと、もしくは1日の営業時間を短くすることにつなげることが必要となります。

正しい時短を実現するための3つのアプローチも、ぜひ実践してみてください。
「働く時間の時短」を進めることで、サービス業の長時間労働を是正するだけでなく、働く環境の質の向上にもつながります。

それらの副産物として、成長実感や仕事における精神的な余裕が生まれ、仕事へのやりがいも高まっていくのではないでしょうか。

辻 勇作

新卒で経営コンサルティング会社に入社。アウトプレースメント事業、自動車関連の新規事業立ち上げを経験後、社内人事として評価制度改訂・採用方法の刷新など組織変革を推進。7年半勤務後、2009年12月アッシュ・マネジメント・コンサルティングに入社。

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