マニュアルを最大限活用するための「3つのフェーズ」

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マニュアルを作ったからといって職場の問題が一気に解決するわけではありません。マニュアルを職場の問題解決に役立てるためには、「つくる」、「つかう」、「かわる」という3つのフェーズを経て、計画的に活動していく必要があります。

フェーズとは「段階」や「局面」を意味するカタカナ言葉であり、長期的なプロジェクトの区切りを表します。手間のように聞こえるかもしれませんが、これら3つのフェーズを一つひとつ着実に進むことで、マニュアルが活用され、導入目的を果たすようになります

また、使い勝手がいいマニュアルを「つくる」ことは、決して簡単ではありません
「業務の手順やポイント」の他に「マニュアルづくりのポイント」を知らなければならないだけでなく、マニュアルを作成する際に使うことになる、パソコンやマニュアル作成用のアプリについても明るくなくてはなりません。

今回は「職場の問題解決にマニュアルを役立てていくための3つのフェーズ」について解説します。
これを読めば、なぜ皆さんの職場のマニュアルがイマイチなのか、その理由が分かると思います。そして、どのように活用していけば、マニュアルが職場の問題解決に生きるのか、イメージもお持ちいただけるでしょう。
ぜひ最後までお付き合いください。

目的達成に向けた3つのフェーズ

マニュアルを使って経営目的を達成するためには、活動全体を、「つくる」、「つかう」、「かわる」という3つのフェーズに分け、各フェーズの狙いに応じて、活動をデザインする必要があります

多くの企業では、この3つのフェーズを意識した活動のデザインができていません。
その結果、マニュアルが完成しなかったり、完成したマニュアルのデキが今一つだったり、マニュアルを作成しても使わなかったりと、導入目的を達成するレベルまでたどり着かないことがしばしば発生します

挙句の果てには、活動の設計に問題があるにも関わらず、「マニュアルは作ってもムダ」、「マニュアルを作っても誰も見ない」とマニュアルに責任を擦り付けるような意見が飛び交うばかりか、「マニュアルを作るとその通りにしか仕事をしない『マニュアル人間』になってしまう」といった見当違いの指摘まで出てしまうような事態に陥るのです。
マニュアル自体には何の責任もありませんが、こうしてマニュアルは支持率を低下させていきます。

マニュアルを“単なるツールの導入”ではなく、“ツールを使った職場改善活動”として位置づけることで、導入目的である経営成果の創出をより確実なものにし、そのような活動が企業文化や企業体質の強化へと繋がっていきます。

ここからは、マニュアル作成によって経営目的を達成する3つのフェーズについて説明します。

つくる

「つくる」は、「目的達成に必要なマニュアルを作成、準備する段階」です。多くの企業がこのフェーズで躓いてしまうようです。

このフェーズで躓く企業は、マニュアルがなかなか完成しないため、本来取り組むべき具体的な活動に移行できません。モタモタしている間に、社員たちの改善に対する熱が冷めてしまったり、経営陣が業を煮やして怒り出したり、活動が進め難い状況になってしまいます。

そのような状況に陥らないために、「つくる」フェーズでは、以下の点に注意してください。

  • 作成すべきマニュアルは明確か?
  • 協力的な作成担当者はいるか?
  • マニュアル作成に必要な工数は捻出できるか?
  • マニュアル作成の対象となる業務の手順、ポイントは理解しているか?
  • マニュアルを作成するのに必要な知識やスキルは備わっているか?
  • 作成担当のPCやスマホの操作スキルは十分か?

特に、マニュアルを作成するために必要な資源の確保が重要です。資源は、量(=マンパワーの多寡)と質(=マニュアル作成ノウハウ&スキルの有無)という2つの問題に目を配る必要があります。
これらのポイントがクリアできないと肝心要のマニュアルができ上がらないので、活動自体をスタートできません。

つかう

「つかう」は、「作成したマニュアルを実際の業務において使う段階」です。

「つくる」フェーズにおいて、どんなにキレイで、わかりやすいマニュアルを作ったとしても、そのマニュアルを使う場面を指定しなかったり、マニュアルを使わずに業務を進めることを許容してしまったりすると、折角つくったマニュアルもキャビネットの肥やしにしかなりません。

マニュアルを使う「場面」、「タイミング」、「方法」などをしっかり定め、最初は決めた通りに使ってもらうように促します。
このフェーズのルール決めが甘いことが、世に出回っている多くのマニュアルの評価が低い最大の原因です。「つかう」フェーズでは、以下の点に注意してください。

  • トリガータスクは決まっているか?
  • 社員・スタッフのユーザーとしてのスキルは十分か?
  • 経営者・経営幹部がマニュアル活用に対して協力的か?
  • 利用状況を確認する仕組みはあるか?
  • 必要なKPIは決まっているか?
  • マニュアルを追加作成するためのPDCAは回っているか?

トリガータスクとは、マニュアルを使うキッカケ(=引き金)になる業務をいいます。言い換えれば、マニュアルを使うことが義務づけられた業務です。
特に、トリガータスクを決めないまま「つかう」フェーズに突入すると、マニュアルを使った改善活動が知らぬ間にフェードアウトしてしまうので注意が必要です。

また、マニュアルをクラウドやサーバーで共有する場合などは、ユーザーとしての社員やスタッフのリテラシーも大きなハードルとなります
リテラシーの不足によって、クラウドに上がっているマニュアルの活用方法が記されたマニュアルにアクセスできない、などという笑い話のような出来事が起こってしまう可能性もあります。

かわる

「かわる」「マニュアルを活用することによって、導入目的を達成する段階」です。

実際にやることは「つかう」フェーズと変わりません。「つかう」フェーズを愚直に実践し続けた結果、たどり着くのが「かわる」フェーズです。
「かわる」フェーズを迎えるためには、以下の点への注意が必要です。

  • 会議やマネジメント・レビューの中で、KGI&KPIの動向を確認しているか?
  • マニュアル作成や活用と人事評価との連動はあるか?
  • 社員・スタッフが導入目的を見据えてマニュアルを使っているか?
  • 金額以外にも投資対効果を見いだすロジックを確立しているか?

「かわる」フェーズは、「つくる」フェーズと「つかう」フェーズの結果として現れるフェーズです。活動期間中は、組織が向かうべき方向を見失わないようにKPIやKGIの推移に注目してください

これは経営陣やプロジェクト事務局だけでなく、マニュアルを使う現場の社員やパート、アルバイトに至るまで広く周知していきましょう
もし、活動が目指すべき方向とズレていたり、KPI・KGIが思うような推移を見せない時には、スピーディーに次善策を講じる体制づくりも重要です。

マニュアルは作って終わりではない

マニュアルが会社の衆知を結集し、生産性向上や業務品質改善などの経営目的を成し遂げるツールとして機能するには、社員やパート・アルバイトがマニュアルに書かれている内容をしっかり理解し、それに沿って仕事を進めることが大前提です

ところが、せっかく膨大な時間とマンパワー、場合によっては多額の費用をかけ、苦労して作ったマニュアルが利用されず、実際の業務とマニュアルの記述内容との乖離が広がっていくケースは枚挙に暇がありません。
その結果、実態とかけ離れてしまったマニュアルは、「あいつは使えない」、「どうせ見ない」という不本意なレッテルを貼られたまま、職場のキャビネットの片隅で誇りをかぶって、大掃除で処分されるのをじっと待っているのが実態です。

野球をやったことのある人ならイメージしてもらえると思いますが、新品のグローブは、見た目はキレイですが、はめてみると非常に硬くて、手に馴染まず、使い物になりません。だから、レザーローションやオイルを塗り、手入れをして、自分の身体の一部になるように型を整えていきます。
つまり、グローブは買って終わりではなく、買ってからがスタートであり、その後の手入れ次第でその価値が何倍にも変化するということです。

マニュアルも同じです。マニュアルは作って終わりではありません。
作ってからが経営目的に向けた活動のスタートであり、その後のメンテナンスやフォロー次第で、目的を達成し、業績や企業体質を向上させ、その価値が何倍にも変化するのです。

おそらく、みなさんも「マニュアルを作りさえすればいい」と考えているわけではないと思います
私たちも、マニュアルについていろいろな書籍や資料に当たりましたが、作り方のポイントばかりで、マニュアルを使った業績向上や生産性向上、組織活性などへ言及したモノはほとんどありませんでした。
たとえ、言及していたとしても、その内容は、およそ職場の実態とはかけ離れた苦笑いしたくなる、残念なものばかりです。

この事実からも、経営目的を見据えてマニュアルを作成し、職場のマニュアル軽視と闘いながら、しっかりと使わせ、成果まで結び付けたケースがとても少ないことが推測されます。

だからこそ、今、この記事を読み、これからマニュアルを使って成果を上げようとお考えの皆さんには、「つくる」、「つかう」、「かわる」という3つのフェーズを見据えた活動を設計していただきたいと思うのです。

まとめ

時短勤務やテレワークも浸透してきており、働き方も多様になってきました。そのような条件の下でも、私たちが属する組織というものは、これまで以上に活性化しなければなりません。
組織活性化の定義に関しては「「骨太なマニュアル」を作って組織活性に役立てよう!」をご覧ください。

そして、組織の活性化にマニュアルは不可欠であるといっても過言ではありません。
ただし、ここまで何度もお伝えしてきているように、「つくる」、「つかう」、「かわる」という3つのフェーズをしっかりと意識しなければ望む結果は得られません。

体裁だけを整えたテキトーなマニュアルが使えないのは当然として、専門家に作ってもらった高価で、豪華なマニュアルであっても使わなければ宝の持ち腐れになってしまいます。

マニュアルを正しく作り、しっかり使い、組織を大きく変えていきましょう。

小川 晴寿

経営コンサルティング会社に8年半勤務した後、ベンチャー企業の取締役として経営に参画。同社が3年で東証マザーズへ上場を果たす一翼を担う。その後、“やりがいを感じられる職場を1つでも多く増やしたい”という想いから、平堀と共にアッシュ・マネジメント・コンサルティングを設立。

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