「骨太なマニュアル」を作って組織活性に役立てよう!

  1. マニュアル
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「マニュアルは組織活性に役立つのか?」と問われても、「マニュアルは作業手順を教えるものであって、それ以上のことができるのかなんて考えたこともない」というのが多くの人の本音でしょう。
私もつい最近まではみなさんと同じ考えでした。

マニュアルといえば、マニュアル人間や、マニュアル的対応などといった、日常会話の中でもネガティブな意味で使われることが多く、いい印象を持っている人は少数派です。
しかし、本来マニュアルは、作業の効率化を実現すると同時に、組織を活性化させ、より良い組織を創造するという役割を担っているのです。

今回は「マニュアルは本当に組織活性に役立つのか?」というテーマについて解説していきます。
より良いマニュアルを作りたいと考えている方も、もっと上手にマニュアルを活用したい方も、今は「マニュアルなんて単なる作業手順書でしょ」と斜めから見ている方も、きっとマニュアルの新しい可能性を感じていただけると思います。
ぜひ、最後までお付き合いください。

活性化した組織には「4つのGood」がある

そもそも活性化した組織とはどのようなものなのでしょうか。私たちは、活性化している組織には、「気分(Feeling)」、「人間関係(Relation)」、「仕事(Work)」、「業績(Result)」という「4つのGood」が同時に存在していると考えています。

気分がGood(Good Feeling)

  • ミッションやバリュー、ビジョンへの共感とシンクロ(=自分ゴト・当事者意識)
  • 個人としての成長実感・有意味感・組織貢献感
  • 安心と安全の担保
人間関係がGood(Good Relation)

  • 良質なコミュニケーション(笑顔・ポジトーク・ユーモア・人格尊重・思いやり・感謝の気持ち・ムダムリムラなし・など)
  • 適度なコミュニケーション機会(報連相・会議体系・イベント・サンクスメッセージ)
  • 徳があり尊敬できる上司・カッコよく目標となる先輩の存在
仕事がGood(Good Work)

  • 明確な目標→高い欲求水準・達成感
  • ベストプラクティスの継続的追求⇔同じことの繰り返し・マンネリ
  • 社会貢献感→派手ではないが、やりがいを感じられる仕事
業績がGood(Good Result)

  • 高い生産性・高い粗利益率→満足できる報酬の源
  • 年々伸長する売上と利益→企業としての成長
  • 十分な開発投資→ワクワクできる新しいことへチャレンジしている証

表に記載されたような活性化した組織を作るために、欠かせないのが「マニュアル」です。特に「人間関係」における良質なコミュニケーションを維持したり、「仕事」においてベストプラクティスを追求し続けたりする際には威力を発揮することでしょう。

私たちは、マニュアルを「仕事や生活において行動や思考の再現性を高めるツール全般」と定義しています。
したがって、一般的な「作業手順書」という意味でのみ解釈しようとすると、違和感を覚えるかもしれません

詳しくは、「マニュアルについて学ぼう!そもそもマニュアルってなんだろう?」で説明しているので、そちらもあわせてご参照ください。

業務品質の向上が組織活性に求められる理由

「マニュアルを作り、業務品質を高め、均質化を図ることが、組織の活性化に繋がる」そんな話をされても多くの人はピンとこないかも知れません。
「マニュアルを作ったって、マニュアル通りに仕事をする『マニュアル人間』が大量生産されるだけで、組織が活気づくなんて想像もつかない」というのが本音ではないでしょうか。

ここでは、みなさんの懐疑的な本音を払拭するために、マニュアルによる業務品質の向上が、組織活性に求めあれる理由について解説します。

私たちは、歴史上初めての仕事をすることはほとんどないといえるでしょう。新しいモノを創り出すのが得意で、創造性や企画力に自信のある方には失礼な物言いになってしまうかもしれませんね。先に謝っておきます、ごめんなさい!

でも、ほとんどの仕事は、すでに誰かが経験したものをトレースしたり、マネたり、参考にしたりして仕事を進めています
画期的な経営戦略を立案したり、斬新なセールスプロモーションを企画したりする人であっても、ゼロから考えることは稀で、参考になる資料や情報を探して、読み込むことから始めるはずです。

なぜなら、それが先人たちの知恵であり、教えであり、私たちがそれを当てにしているから。
彼らがどんなやり方をしたのか、仕事を進める上でのポイントは何だったのか、どのプロセスでどんな失敗が起きたのかなどをマニュアルにまとめてくれたおかげで、しなくてもいい無駄な仕事から解放されているわけです。

もし、マニュアルがなかったら、試行錯誤の連続でなかなかアウトプットを出すことができません。
ということは、仕事の手戻りもたくさん発生し、納期通りに成果を上げることができず、組織全体が疲弊していくことになります。

実際、数名の創業メンバーで経営していた頃は調子が良かったのに、社員を増やした途端に成果が上げられなくなって、ギスギスし、崩壊してしまう組織は少なくありません。
そして、そういう組織は、必ずといっていいほど、創業メンバーの上手な仕事の進め方がマニュアルになっていません

また、最近の職場を見ると、働く人のダイバーシティが進み、異なる属性の人たちが、同じ職場で働くことが増えました。
年齢や性別だけでなく、正社員と派遣社員、フルタイム社員と時短社員という雇用契約上の身分の違い、共働きやシングル・マザー、介護などの家庭環境の違い、仕事に熱中したい、私生活を重視したいなどの価値観の違い、国籍や宗教、使用する言語なども含めると、それらの掛け合わせによって何千種類、何万種類という異なる個人が集まっています。

そのような状況であっても、業務の遂行にあたっては、会社が求めるベストプラクティス(=最適なやり方)の再現が期待されているわけです。
外国人実習生が絞めたネジが緩くていいことはないし、新人の電話応対が拙くてもいいということはあり得ないのです。

だから、各職場ではマニュアルを作り、会社が求めるベストプラクティスを共有できる環境を整えます
そして、誰がやっても、マニュアルに記されたベストプラクティスを再現することを目標に職場を運営していきます。「属人化OK」の職場では到底なしえることができません。

私たちは、ベストプラクティスを多くの人に伝え、より効率的かつ効果的で、活性化された組織運営をおこなうために、多くのマニュアルを作ってきたといえるでしょう。

組織活性を実現するマニュアルの作り方

作業や思考の手順、ポイントが記載されていれば、マニュアルとしての要件を満たすのかといえば、決してそうではありません。
マニュアルは、組織が大切にしている価値観や哲学、基本思想を取り込み、そこに書かれている行動を実践することによって、価値観や基本思想を具現化するものでなければなりません。

私たちは、このような価値観、基本思想を上手に取り込んだマニュアルを、「骨太なマニュアル」と呼んでいます。

「骨太なマニュアル」とは、以下の4つの条件を満たしています。

  • 組織が大切にしている価値観や基本思想が反映されている
  • 記載された作業や思考を実践することで、一味違うこだわりを表現する
  • お客さまや社会からも好印象を持ってもらえる
  • 時代や状況の変化に応じて、適宜アップデートされる

作業手順を記載することは、それほど難しいことではありません。その作業を経験したことがある人なら、それなりにまとめることができるでしょう。
作業手順を記載しただけのマニュアルに、1〜4を盛り込むことによって、「骨太なマニュアル」にバージョンアップできます。

「骨太なマニュアル」をより具体的にイメージしていただくために、いくつか事例をご紹介しましょう。

たとえば、日頃から衛生管理の重要性を訴えている外食企業があります。
同社の手洗いマニュアルには、「指、腕、指の間、指先を最低でも30秒(=ハッピー・バースデーを2回歌うくらいの長さ)かけて洗い、手についた石鹸を20秒程度かけて洗い流す」と書かれています。
このように書くことで、すべてのスタッフが、入念な手洗いを再現できるようになります。

また、人生を、目標を持って真剣に生きることを提唱している企業では、毎年、全社員にライフプランシートを作ってもらっています。
ライフプランシートは、「個人」、「家庭」、「仕事」という3つの領域に対して、それぞれ10個ずつの目標を、「1年後」、「3年後」、「10年後」、「○年後」(※最後は自由設定でOK)の4つの時代区分で考えるように設計されています。
3領域×4時代区分×10個ずつの目標なので、全部で120個の人生の目標を設定します。

このライフプランを初めて作る社員は、すべて埋めるのに8~10時間くらいの時間がかかるそうです。
実際問題として、目標の数はいくつでも構わないのですが、120個という膨大な数の目標を考えることが、社員一人ひとりが自分の深層心理にまでしっかり向き合うことになるという考えから、このようなフォーマットを採用しているとのことでした。

これらの事例のように、一見すると代わり映えしないように見えるマニュアルも、自由に味付けできる部分に独自の価値観や基本思想を組み入れることによって、世界でたったひとつの骨太なマニュアルになっていきます

気合いを入れて骨太なマニュアルを作れば、それですべてが完了するのかといえば、そうではありません。
お客さまの趣味嗜好や行動様式は、時代の流れや社会的な背景によって刻々と変化します。

かつて、居酒屋は大人がお酒を飲むためのお店でした。しかし、今では小さな子どもを連れたヤングファミリーが家族の食事の場として利用したり、高校生がノンアルコールで食事だけ楽しんだりしています。
そのため、デザートとしてアイスクリームをオーダーされたとき、今では子ども用の皿とスプーンを用意したり、チョコペンでイラストを描いたり、バースデー用に生クリームやフルーツを加えたりすることが当たり前になっています。

最初は一部のスタッフが個人芸としておこなっていた対応が、どこかのタイミングでベストプラクティスに格上げされ、マニュアルに記載され、周知されることになります。
「顧客満足を追求」という価値観を取り入れていたマニュアルによって、スタッフの対応レベルが上がり、それをより高度なマニュアルにすることで、マニュアルは日々進歩を遂げているのです。

マニュアルを導入すれば組織活性するわけではない

ここまで「骨太なマニュアル」の作成方法をお伝えしてきましたが、ここからは、マニュアルを導入し、組織を活性させようと考えた場合の心構えについてお話しします。

マニュアルを作り、職場に配れば、それで組織が活性化するかといえば、そんなことはありません。
新しいツールやシステムの導入を検討する企業には、導入さえすれば、事態が好転すると思っている傾向が見られます。
そこまで都合よくは考えていないとしても、導入の苦労や定着・浸透の大変さを正しく認識し、それでも新しいツールやシステムを使って成果を出すんだと腹を括っている企業は極めて少数派です。

システムやツールに投資を決断したことに満足して、自分でまったく使おうとしない事業責任者や経営者、私はこのやり方が一番やりやすい、と新しい方法を絶対に変えようとしないお局さま、俺たちはもう先は長くないから今まで通りでやらせてよ、とアプリを触ろうともしないベテラン社員などの抵抗勢力が組織活性を阻みます。

また、マニュアルの場合、導入にかかるコストが数字で明確に算出されるのに対して、その成果は「新人スタッフの早期育成」、「ベストプラクティスの見える化」、「ナレッジマネジメントの推進」など、フワッとしたものである場合が多く、昭和や平成初期の経営者が大好きな「費用対効果」が見えにくいという致命的な弱点もあります。

「50種類の作業をマニュアルにしました」という報告はできても、「それで?何が、どう変わったの?利益が増えたの?コストが下がったの?」と切り返されると、言葉につまり、口を噤んでしまうことが多いのです。

だからこそ、マニュアルを組織活性に活かすには、マニュアルを導入する前に、冒頭でご紹介した「4つのGood」に照らし合わせて、「マニュアルを使って自分たちの組織をどのように活性化させたいのか」を明確にし、経営者や経営幹部と合意しておく必要があります

このステップをフワッとさせてしまうと、「仏作って魂入れず」という状態に陥り、「マニュアルを作っても意味なかったね」という悪評がふりまかれる温床になりかねません。

まとめ

今回は、組織を活性化させる際のマニュアルの役割について解説しました。
マニュアルは単に作業や思考の手順やポイントを示すだけの書類やフォーマットではないこと、マニュアルに組織固有の価値観や基本思想を組み入れることが可能なこと、マニュアルは作って配布するだけでは組織が活性化しないことをご理解いただけたと思います。

次回は、マニュアルを上手に活用していくための3つのステップについてご説明いたします。お楽しみに。

小川 晴寿

経営コンサルティング会社に8年半勤務した後、ベンチャー企業の取締役として経営に参画。同社が3年で東証マザーズへ上場を果たす一翼を担う。その後、“やりがいを感じられる職場を1つでも多く増やしたい”という想いから、平堀と共にアッシュ・マネジメント・コンサルティングを設立。

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