マニュアルについて学ぼう!そもそもマニュアルってなんだろう?

  1. マニュアル
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私たちアッシュ・マネジメント・コンサルティングは、日々のコンサルティング業務の中でたくさんのマニュアルを作成しています。
飲食店や工場のオペレーションマニュアル、研修担当者が使うトレーニングマニュアル、採用活動の虎の巻になる面接官マニュアルなど、多種多様なマニュアルを作ってきました。

「人が育たない」、「エラーが頻発する」、「品質がバラつく」といった問題が起きると、ソリューションの候補として真っ先に白羽の矢が立つのがマニュアルです。
団塊の世代の退職、働き方改革の推進、外国人や高齢者の雇用促進などの経営環境の変化によって、私たちは、これまで以上に生産性の高い働き方を求められています
そのような状況の中で、頼りになるのがマニュアルです。

紙媒体からスマホやタブレット、さらにウェアラブル端末へと形状が変わったとしても、マニュアルによって仕事や作業手順を学習する、というスタイルは変わらないでしょう。
そこで、あらためてマニュアルの効果や作り方、活用方法について学ぶ場を作ろうと考えました。

今回は、マニュアルってなんだろう?、本当に組織にとって必要なの?など、マニュアルに関する疑問について解説していきます。
マニュアルに興味津々!!という方はもちろん、マニュアルなんて興味ないよ、という方も、ぜひ最後までお付き合いいただけたら嬉しく思います。

マニュアルってなんだろう?

マニュアルという言葉を国語辞典で調べたり、ネットで検索したりすると、多くは「作業の手順を示した文書」と説明されています。
しかし、私たちは、それだけでは少し物足りないと考え、マニュアルを「仕事や生活において行動や思考の再現性を高めるツール全般」と独自に定義しています。

私たちの考えるマニュアル定義のポイントは、以下の4つです。

  • 仕事だけでなく、生活も対象にしている
  • 行動(=作業)だけでなく、思考も対象にしている
  • 手順書や取扱い説明書などの文書だけでなく、ツール全般を対象にしている
  • 「再現性」という言葉を含めている

マニュアルは、仕事に限らず、私たちの生活の中に当たり前のように入り込んでいます。
新しい電化製品をセッティングするとき、新しいアプリを使うとき、マニュアルを片手に奮闘する姿は日常的な光景となりました。

また、最初は行動(=作業)だけを対象にしていたマニュアルは、仕事や生活の多様化とともに、「不況時の経営戦略の立て方」、「困った部下とのつき合い方」など、思考(=考え方)を伝えるものとしても使われるようになりました。
そうなると、手順書や取扱い説明書以外のポイントを整理したリストや、考える手順を示したフォーマットなどのツールも、マニュアルと同じような目的で使われていることに気づきます。

最後は「再現性」です。
マニュアルにとって「再現性」が最も重要であり、すべてのマニュアルは、行動や思考の「再現性」を高めるために作られているといっても過言ではありません。

再現性とは「実験などにおいて、決められた条件や手順でおこなえば、同じ事象や結果が繰り返されたり、確認できたりすること」をいいます。
もともとマニュアルは、工場や建築現場、店舗などにおいてオペレーション(=作業)をする人の仕事の再現性を高めるために作られました。

一口に再現性を高めると言っても、かんたんではありません。
例えば、毎年同じ時期に、種を植え、肥料を与えても、作物のデキは年によって変わります。金属の部品にヤスリを同じようにかけても熟練工Aさんと新人Bさんでは、仕上がりに大きな差が生まれます。

このような「差」を少しでも埋めるためにマニュアルは必要とされてきました。
1次産業、2次産業が主要産業だった時代は、畑や農場、工場、建築現場などで働く人々を対象とした作業の手順を示すマニュアルが多くつくられました。

産業構造が変化し、3次産業で働く人が増えたことによって、店舗やコールセンターなどのサービス業の現場にも接客やクレーム対応に関するマニュアルが現れます。
ついにはオフィス・ワーカーの仕事を対象とした、経営計画書の作成に関するマニュアルが登場するようになりました。

また、仕事の場面で活躍していたマニュアルは、いつしか私たちの暮らしの中に入り込み、恋愛も、育児も、資産運用も、今ではありとあらゆるジャンルにマニュアルが存在しています
私も学生時代は恋愛マニュアルに教えを乞おうとしましたが、「再現性」が高くないので止めました(笑)

アンチ・マニュアル派からは「マニュアルがあるとそれ以上のことをやらなくなる」、「マニュアルを見るよりも知っている人に聞く方が早い」と指摘されることの多いマニュアルですが、マニュアルがあることで、私たちは未知の作業や思考業務に対して、安心して初めの一歩を踏み出すことができているわけです
そういう意味では、仕事や暮らしの中でマニュアルにお世話になったことがない人は一人もいないのではないでしょうか。

マニュアルの種類

マニュアルの種類利用シーン再現の対象再現性の高さ現場での主な利用者
01. 作業手順書仕事・生活行動現場作業者
02. チェックリスト仕事・生活行動・思考低〜高
※思考系は利用者によってバラつく
管理監督者
03. 業務フロー・フローチャート仕事行動・思考現場作業者、管理監督者
04. トーク・スクリプト仕事行動中〜高
※イレギュラーの対応はバラつく
電話オペレーター、営業マン
05. 一覧表仕事・生活行動・思考中〜高
※表から読解・分析の結果はバラつく
現場作業者、管理監督者
06. 運用スケジュール・工程管理表仕事行動・思考現場作業者、管理監督者
07. 管理台帳仕事行動管理部門、管理監督者
08. 帳票・書式・フォーマット仕事・生活行動・思考低〜高
※記述内容は利用者によってバラつく
対象問わず
09. 取扱説明書仕事・生活行動現場作業者
10. 用語集仕事・生活思考(知識)対象問わず
11. フレームワーク仕事思考低〜高
※利用者の知識・見解によってバラつく
企画開発、管理監督者

マニュアルの定義や意味についてはご理解いただけましたか? 
ここからはマニュアルの種類について解説していきます。

今回は、「作業の手順を示した文書」という狭義のマニュアルではなく、私たちが定義する「仕事や生活において行動や思考の再現性を高めるツール全般」という解釈でご紹介するので、「えっ、これもマニュアルなの?」と思われるかもしれません。

上の表は、マニュアルの種類別に「利用シーン」、「再現の対象」、「再現性の高さ」、「職場でのおもな利用者」を整理したものです。

表を見ると、マニュアルが仕事だけでなく、私たちの生活の中に入り込んできていることが分かります。
また、思考業務を再現の対象としているマニュアルは、再現性がバラつく傾向があります。
これはマニュアル使う人の持っている知識や情報によって、アウトプットがバラつくためです。

職場でのおもな利用者は現場作業者から管理監督者まで、対象を幅広くとらえたものが多く、マニュアルによって仕事の進め方や考え方などを上手に伝えていきたい意図が反映されているといえます。

01. 作業手順書(←狭義のマニュアル)

職場にあるさまざまな作業を、「品質」、「安全性」、「生産性」、「作業効率」に配慮しながら、初心者でもできるように、作業を実施する順序にそって、やり方やポイントを示した文書のことです。

料理のつくり方を記述した手順書は「レシピ」と呼ばれ、独自のジャンルを形成しています。

02. チェックリスト

作業のやり漏れやオペレーションミスを予防するツール。
実施が完了した作業に対して、当該作業のチェック欄に完了した印(レなど)を記入します。

また、「オズボーンのチェックリスト」のように業務改善や問題解決のアイデアを発想するための、視点・ポイントを整えたツールとしても存在しています。

03. 業務フロー・フローチャート

業務プロセスを図解し、可視化したものです。
可視化することで全体を俯瞰できるメリットがあります。

文章と比較して、言葉が省略され、必要な情報だけがシンプルに記述されていることから、本質的な情報を直感的に理解するのに役立ちます

04. トーク・スクリプト

話しをする相手の特性や関心事に合わせた対応方法を、事前に用意する「スクリプト(=台本)」のことを指します。
相手のタイプや話材、質問内容、状況に合わせた会話や対応法について、複数のプロセスを想定しながら作成します。

05. 一覧表

種々の事項について、その要点やあらまし、概要が一目でわかるようにまとめた表です。
たくさんある情報を整理し、ある項目に沿ってまとめることで、特徴や傾向を読み取りやすくします。

06. 運用スケジュール・工程管理表

作業の計画やスケジュールを表にまとめたものです。
建設や施工、土木、製造開発、生産、プロジェクト管理などの業務で使われます。

これによって「作業全体」、「時間軸」、「各作業の関連性」を可視化でき、関係者が共通の認識を持てるようになります。

07. 管理台帳

同じ職場の人が利用する什器や備品、ソフトウェアを効率よく管理するための台帳のことです。

ハード、ソフトに関わらず、基本的な事実をひとつの帳簿に記載しておくことで、故障や修理の履歴を管理し、保全計画を立てることができます。

08. 帳票・書式・フォーマット

帳簿や伝票などの総称であり、記入するための空欄を設けた事務用紙を指します。

ITの普及によって、紙以外の媒体も使用されるようになりました。
項目やレイアウトが統一されていることによって、書き手はヌケモレなく、一定水準以上のアウトプットができ、読み手は思考プロセスが同一であることによって理解が促進される効果があります。

09. 取扱説明書

機器や道具をどのようにして扱えばよいのかを説明している冊子などの文書。別称としてマニュアルといわれることが多い。

「とりあえず使ってみて困ったら読む」、といった使われ方になることが多いですね。
安全使用促進の観点から分厚く、複雑になるトレンドでしたが、近年はiPhoneに代表されるように取扱説明書のない商品も増えています。

10. 用語集

特定のテーマに関する語彙を音順などに配列したリスト。
収録した言葉に簡単な定義や解説、対応する外国語などを付与しています。初心者が専門用語を理解する助けになります。

11. フレームワーク

思考のポイントを整理・パターン化し、誰でも一定水準以上の解が得られるようにした「枠組み(フレーム)」を指します。
何かを考えたり、分析したりする際に一定の枠組みを設けることで、フリーズが減少し、アウトプットに向けた思考が加速されます。

以上が、おもなマニュアルの種類と解説です。

人によっては、マニュアルと分類されることに違和感を覚えるモノが含まれているかも知れませんが、私たちの仕事や生活の中に入り込んだお馴染みのツールも多かったのではないでしょうか。
買い物をする時に持参する買い物リストや料理をする時に手放せないレシピも、すべて再現性を高めるマニュアルなんですね。

今回紹介した11のマニュアルは、職場環境のIT化、デジタル化が急速に進んだことによって、進化が加速しています。
動画や写真で複雑な作業のやり方を伝える、動画マニュアルなどはその最たるものだといえるでしょう。

マニュアルが導く組織活性

各企業の現場へ伺うと「マニュアルなんて作ったって、ほとんど見ない」、「見ても情報が古くて使い物にならない」、「知っている人に聞く方が速い」とマニュアルに対する悪評を耳にすることが多々あります。

しかし、マニュアルによって、職場の規律性や業務の生産性を高めた事例はたくさんあります
ここからは、事例を踏まえながら、「マニュアルって本当に組織活性に役立つの?」ということについてお話をしていきます。

質問です。皆さんがファーストフード店で働いている店員だとして、もし、お客さまが会計の時に別のお店の割引券を出してきたらどうしますか?
常識で考えれば「お客さま、大変申し訳ございません。そちらは他店の割引券ですのでお取り扱いはできません」と対応するでしょう。

しかし、常識を覆し、他店の割引券を利用できるようにしたお店があります。
宅配ピザで有名な「ドミノ・ピザ」です。

ドミノ・ピザは、2016年に 「クーポン大そうじ祭り」を実施しました。
これは、期限切れのクーポンから自宅のポストに投函されたチラシのクーポンまで、世の中のありとあらゆる「紙」のクーポンが対象で、注文する際に「CP28」とクーポン番号を伝え、ピザを受け取る際にクーポンを渡すだけでピザ全品が28%OFFになるという企画です。

このキャンペーンは、SNSでも話題となり、大ヒットの販促施策となりました。

この時、現場のオペレーションを支えたのがマニュアルです。
マニュアルがなければ、お客さまが殺到し、収集がつかない状態になったことは想像に難くありません。

では、どのようにマニュアルが活用されたのでしょうか。
販促プランを企画する段階では、「オズボーンのチェックリスト」のようなアイデアを発想する視点を使い、他社のクーポンの活用を思いつき、「ロジックツリー」を使って具体的な方法を検討、最後に「6W2H」を使って「To Doリスト」を作ったことが推察できます。

アイデアを現場へ展開していく段階では、注文から商品の受け渡しまでを「フローチャート」で整理し、スタッフの誰もが視覚で理解できるようにしたり、カウンターや電話での応対の仕方を「トーク・スクリプト」にまとめ、スムーズな接客ができるようにしたりと、企画から現場への展開、現場での実践に至る過程で、数々のマニュアルが活躍し、大ヒット販促へと繋がったと推し量ることができます。

このように考えると、日頃、私たちがおこなっている仕事は、クリエイティブな仕事も、オペレーションも、多くのマニュアルによって支えられていることが分かります。
マニュアル活用の繰り返しと積み重ねによって活気ある組織が作られているのです。

まとめ

今回は、「マニュアルとは何か」、「マニュアルの種類」、「マニュアルって組織活性の役に立つの?」ということについて解説しました。

「一口にマニュアルと言っても、随分と多岐に亘って複雑なんだな」と難しい印象を持たれたかもしれませんが、ご安心ください。
これからパートを分けて、わかりやすくマニュアルについて解説をしていきます。

次回は、マニュアルを使った組織活性のアプローチについてご説明いたします。ご期待ください。

小川 晴寿

経営コンサルティング会社に8年半勤務した後、ベンチャー企業の取締役として経営に参画。同社が3年で東証マザーズへ上場を果たす一翼を担う。その後、“やりがいを感じられる職場を1つでも多く増やしたい”という想いから、平堀と共にアッシュ・マネジメント・コンサルティングを設立。

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