マニュアル作成サービス「Teachme Biz」生みの親が語る、開発秘話やマニュアルの未来

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皆さんは、「マニュアル」という言葉を聞いて、どのような印象を抱きますか?
とにかく量があるもの、作るのに手間や時間がかかって面倒、作ったはいいけどまったく見返さない、など、マイナスなイメージを抱く人が多いのではないでしょうか。

近年、マニュアルはそれらのイメージを覆しつつあります。
多くのマニュアル作成サービスがリリースされ、マニュアルは、より、つくりやすく、管理しやすく、活用しやすくなりました。
中でも、ビジュアル化することに特化した、マニュアル作成サービス「Teachme Biz」は、シンプルながら実用性の高い機能が特徴。業種・業態を問わず多くの企業に導入されています。

今回は「Teachme Biz」の運営会社である、株式会社スタディスト取締役・庄司 啓太郎氏にインタビューしました。
「Teachme Biz」が唯一無二のマニュアル作成サービスであり続ける理由や、マニュアルという存在の価値、これからの役割などに迫ります。

株式会社スタディスト


取材・文:根本 理沙(株式会社Lipple

「Teachme Biz」とはどのようなサービスですか?

Teachme Bizは、いわゆる手順書(マニュアル)を、写真や動画を使ってわかりやすくつくり、共有できるサービスです。

もともとは手順書(マニュアル)を用いた生産性向上にご活用いただいていましたが、最近では人材育成にも活用していただけるように、トレーニング機能の強化などもおこなっております。

私たちはTeachme Bizを、「組織の生産性向上と人材育成のためのプラットフォーム」という位置づけで、考えております。

具体的に、どのような場面で役立てることができるのでしょうか?

導入企業の業種や業態は多岐にわたりますが、一番イメージしやすいのは、飲食店や小売店、宿泊施設などのサービス業ですね。
特に多店舗展開している企業では、アルバイトスタッフの育成が店長や先輩スタッフに一任されていることが多く、教え方がバラバラだった、ということもあります。また、通常業務が忙しく、アルバイトへの教育が充分に行われないまま現場にいきなり投入され、戸惑いながら業務をやっているということも多いので、そういった場面での人材育成に貢献できると考えています。

実際にどのような業種・業態のお客さまが利用なさっていますか?

実際に私たちのお客さまで一番多いのが製造業。日本の会社の半数が製造業なので、相対的に多くなるというのはありますが。
その次が先ほどお話しした、小売業、飲食業、宿泊業、あとはそれに類するサービス業ですね。例えば、フィットネスクラブのような業態も該当します。最近では、コロナの影響か運輸業のお客様への導入も増えました。本当に幅広い業種・業態で活用いただいていますが、多拠点で展開されており、人の入れ替わりが頻繁な企業が多いです。

「動画+静止画マニュアル」に着目した理由を教えてください。

Teachme Bizは、動画だけ、静止画だけ、ではなく「動画と静止画を組み合わせることができる」のが大きな特徴だと思っています。

そもそも「ビジュアルであることが大切」という観点が大前提にあります。
「百聞は一見に如かず」ということわざがあるように、上、下、右、丸いやつ、四角いやつ、と伝えるよりも、画像にマークやテキストを入れた方が、圧倒的に理解するスピードが早いですよね。教える側も、この画像を見てねと伝えるだけで、ある程度の説明を省くことができます。
ビジュアルがあることで、言語の壁も乗り越えることができますよね。外国人用に英訳しなくても、画像にマークや番号が記入されているだけで、理解してもらいやすくなります。

WordやExcelは普段から使い慣れているソフトかもしれませんが、それで手順を説明しようとすると、実はかなり難しい。カメラで撮影した写真を読み込んで、綺麗にレイアウトしてというのは、作成に手間もかかるし技術も必要になるので、率先してやろうという人はいないですよね。手順書(マニュアル)をつくっているだけで日が暮れてしまいます。

動画だけで伝えようとしても、1本の動画をちゃんと分かりやすく作るのって、めちゃくちゃ編集技術が必要になりますよね。
だから、仮に動画マニュアルをつくれたとしても、結局アップデートするのが面倒で、業務手順が変更されたにもかかわらず、最初に撮影した動画が更新されずずっと残っているという話を聞くことがあります。
しかも動画って見ながら作業はできませんよね。自分が作業するときは一時停止しているんですよ。

手順書(マニュアル)はあくまでも手順を伝えるためのもの。その課題が浮き彫りになったところで、誰もが使いやすく、かつ伝えやすいスタイルが、動画+静止画の組み合わせでした。

Teachme Bizをサービスとして展開しようと思った
「きっかけ」を教えてください。

きっかけは、前職で「業務改善のコンサルタント」として勤務していた頃の経験にあります。
当時、スタディスト代表の鈴木と私は同じ会社でコンサルタントをしておりまして。主に製造業のお客さま向けに、社内で使用する業務システムを提案して導入していただく、というプロジェクトに携わっていました。

そのプロジェクトの中で、システム同様、お客さまごとにそれぞれ手順書(マニュアル)を作成し、納品するという業務があったんです。
当時は何も術がなかったので、お客さまのご要望に沿って納品をしていたんですね。Word、Excel、PowerPointと、プロジェクトによって作成形式はバラバラでした。
プロジェクトごとに、似たような業務を微妙に形を変えながらおこなっているのは、ものすごく非効率だなと感じていました。それが原体験ですね。

膨大な時間を費やして苦労しながら納品している状態に疑問を抱き、世の中では、どのように手順書(マニュアル)を作成しているのかと考えたんです。そうしたら、みなさん同じように苦労されているようで、これといった決め手がないことに気がついたんです。
もっというと、「手順書(マニュアル)の作成は面倒だからやっていない」という会社もたくさんあるな、と徐々に知るようになったんです。

Teachme Bizをリリースするまでの、
苦労話や裏話がありましたら教えてください。

そうですね、苦労しかなかったですね(笑)
もともと手順書(マニュアル)の世界って、世の中から見れば「裏方」の存在なので、どう攻めていこうかなと。例えば新卒で就活している学生のなかで、「手順書(マニュアル)作成をやりたい」と言っている子なんて、ひとりもいないんですよ。

けれど、どこかの会社に入社して、何らかのポジションについたら、手順書(マニュアル)を作成する機会が訪れる可能性はとても高いわけです。
必要に迫られて、渋々ながらもつくるのが、手順書(マニュアル)なんですよね。
手順書(マニュアル)が抱える負の要素が大きいのは最初のうちからわかっていたので、そこを解決する余地はあるなとは感じてはいたんです。じゃあどうやって解決すればいいのか。解決策を考えるまでが大変でしたね。

ほかにも苦労話はたくさんありますが(笑)、創業メンバーはコンサルタント出身者ばかりでプログラミングを専門にしていた者がおらず、独学で開発に携わったりもしていました。代表の鈴木も自らプログラミングの本を買って、いろいろと試行錯誤していました。

当時はTeachme Bizの完成系のイメージもクリアには描けていませんでした。ですが、「とにかく手順を伝えやすくしたい」「全員が理解できる手順書(マニュアル)をつくれるようにしたい」という、基本的なアイデアはありました。

Teachme Bizのこだわりポイントを教えてください。

Teachme Bizはとにかく機能がシンプルなんですよね。実は、あえてシンプルにしているんです。
これは過去の経験が生きているのですが、システムはとかく高機能、多機能になりがちです。あの機能もあったほうがいい、この機能もあったほうがいい、とやっているうちに、なんでもできるよ状態になってしまっていて。できることが多い一方で複雑なものになり、それって使う側にとって本当に便利なのかな、と思ったんです。

当時の経験を生かし、Teachme Bizは、最低限できなきゃいけないことだけを機能として残そうということになりました。機能の取捨選択はものすごく悩みましたね。あったほうが良さそうなだけど、なくてもいいよねという機能が多くて、何度もディスカッションを重ねました。

例えば、Teachme Bizは、テキストのフォントサイズや、カラーの変更ができません。技術的に機能として実装することは可能だと思いますが、使う側の立場になって考えると、それらの機能はなくてもいいのではないかと思い至りました。
フォントのサイズやカラーの設定ができることで、社内で手順書(マニュアル)をつくるルールが生まれてしまうんですよね。タイトルのフォントはこのサイズ、赤文字を使っていいのはこういうときだけ、ですとか。
結局、手順書(マニュアル)を作成するためのルール、ひいては手順書(マニュアル)が生まれてしまうのって、本末転倒といいますか、私たちの目指すゴールではなくなってしまうんですよね。
機能追加=良いことという傾向がありますが、機能を減らすことも良いことだと考えています。

「あったほうが良いと思われているものを、あえてなくす」という考えに至るまでも大変でした。
創業当初は、今のTeachme Bizとは全く異なるプロダクトをイメージしていた時期があったんですね。
ナレッジマネジメントという上位概念から入って、非常に抽象的なアイディアをもとにしたプロダクトを構想していました。そのコンセプトを、当時新しく入社した社員に見せたんですよ。そうしたら、「全然何言ってるか分からないっす」って言われてしまって。愕然としちゃいました(笑)
その後私たちは、「高機能で多機能な複雑なものの方が良い」という固定観念を捨てて、自分の両親ですとか、システムに詳しくない人に伝わるものにしよう、と切り替えることにしました。

Teachme Bizはいまでこそ、大きな企業さまに使っていただいておりますが、元々は、中小企業の方に活用していただくことを想定していました。それこそ10人15人くらいの規模で。
リリース当時、私たちもまだ10人ほどの社員しかいなかったのですが、私たちでさえ困っていたので、同じくらいの規模の企業の方がどういったものを求めるのかを考えながら、調整していきました。

実際に導入されている企業さまの反応を教えてください。

「手順が可視化されて、共有しやすくなったことで、業務上の効率が上がった」というお声をたくさんいただきます。
可視化することの価値は、とても大きいと思いますね。今まで社内で決まった人しかできなかったことが、見える状態になることで、誰にでもできるようになるですとか、業務上でのインパクトはあるようです。

あとは、手順書(マニュアル)のブラッシュアップができるですとか、最近はリモートワークが増えたことで、オンラインでの研修に役立つですとか、そういったお声をいただきます。

結局、手順書(マニュアル)は何の役に立つかというと、組織における人の制約を減らすことなんですよね。「あの人しかできない」「あの人に聞かないとわからない」という業務は多く存在しています。しかし、人間が稼働できる時間というのは限られていますから、手順を教える時間だけ、その人の負担が増えるわけです。
昨今のリモートワークの環境ではなおのこと、同僚や先輩に気軽に相談することも難しくなっています。対面で会うことができなくなってしまった今だからこそ、今まで教えていた内容を体系化して社内で共有し、いつでもどこでも教育の場面で使えないといけないよね、という意識の変化はどの企業さまにもあるのではないでしょうか。

大きな変化があった今、
マニュアルの大切さや価値を改めて感じましたか?

もともと、手順書(マニュアル)の活用は「重要ではあるが、緊急ではない」ものだったと思います。それが、コロナの影響で各社がワークスタイルや業務内容の見直しを迫られるようになり、緊急度が上がったのだと感じています。

手順書(マニュアル)という言葉は、どうしてもネガティブな印象を持たれがちです。「マニュアル人間」という言葉があるように、型にハマっていて融通がきかない、思考停止している、つまらない、といったイメージで捉えられがちです。
そうではなく、私たちは守破離の「守」はとても大切だからこそ、手順書(マニュアル)の存在もとても大切だということを発信していきたい。「破」も「離」も大切ですが、まずは「守」からやっていこう、と。
そもそも「守」がないと、「破」も「離」もできないでしょ、というのが私たちのスタンスなんですよね。

こういう時代になってしまったからこそ、みんなが同じ共通の認識を持って仕事をするというのが、改めて大切なのかなと感じています。
手順書(マニュアル)というものを、手順を学ぶ際に必要なコミュニケーションの効率を上げるための、ひとつの手段と捉えられるといいですよね。

手順書(マニュアル)の存在は、今後どうなっていくと思いますか?

そうですね。AIやRPAといったテクノロジーは進化していきますが、手順を何かに書き起こして残す、という営みは今後もなくならないと思います。
「手順を教える」というのは、おおげさではなく太古の歴史からやっているはずなんです。火の起こし方や、獣の狩り方など。生きるための知恵を、親子代々伝承しているわけです。
いつか機械に人間の仕事がとって変わると言われていますが、どこまでいっても、人間がやらなくてはならない領域が残るはずです。そういった領域を支援するための役に立つのが、手順書(マニュアル)だと思います。

Teachme Bizの今後の展開について教えてください。

展開という意味でいえば、人材育成の機能をより強化しながら、尖らすところは尖らしていきたいですね。
また、今はあらゆる業界で汎用的に活用いただいていますが、今後は個別の業界や業務に対して特化した機能を提供する可能性もあります。例えば、製造業と飲食業では、手順書に求められることが違う部分もありますので。

あとは、さらに使いやすいサービスとして磨きをかけていくことは重要だと考えています。
ITツールって、やっぱりすぐに使いこなせる人と、なかなか使いこなすまで時間がかかる人がいますが、その差をできるだけ小さくしたいですね。

色々と展開を考えていますので、その時が来るまで楽しみにお待ちいただければと思います。

手順書(マニュアル)って、未来の他人のためにつくる作業なんです。つくっている本人は業務をある程度理解しているので、自分ひとりで生きていく場合、手順書(マニュアル)なんて必要ないんです。
だけど、自分一人で生きていくことは、なかなか難しい。生きていくために、未来の誰かのために時間を投資しなくてはならない場合もあります。
限られた自分の時間を手順書(マニュアル)にほんの少しだけ投じることで、あとから組織全体に大きなメリットとなって帰ってくる。そのためのプラットフォームとして、皆さんのより良い未来を築くためのお手伝いができればうれしいですね。

根本 理沙

横浜市在住。 学生時代よりウェブメディアを複数運営していた経験を生かし、株式会社Lippleで編集長として勤務。ライティングだけでなく、ウェブサイト運営・分析も行う。年間100本以上の映画鑑賞がライフワーク。

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